【写真】レトロな世界観も魅力『インクレディブル・ファミリー』場面写真
本作は、『Mr.インクレディブル』(04)でアカデミー賞長編アニメ賞を獲得したバード監督が、脚本と共に再びメガホンを取った待望の第2弾。破壊的なヒーロー活動の禁止命令を受け、“Mr.インクレディブル”ことボブは平穏な日々を過ごしていた。ところがあるきっかけから、妻のヘレンが悪と戦うヒーローに復帰することになり、生活が一変!専業主夫となったボブは、“家庭を守る”という責務を負わされることになるが…。
全米アニメ映画史上NO.1のオープニング記録を打ち立て、前作を上回る快進撃を続ける本作だが、大ヒットした要因についてバード監督は、「ヒーローだけれど普通の家族、そこに共感するのでは」と分析する。「ほとんど僕の実体験によるものだが、例えば、長男ダッシュのように姉をいつもイライラさせる弟であった時期もあったし、長女ヴァイオレットのように自分に自信が持てない10代を過ごした経験もある。夫として妻のために何か役に立ちたいと思う気持ちはボブそのもの。つまり、人は成長していく過程の中でさまざまな経験をするが、観ている方も、この映画からいろんな共感ポイントを見つけることができるんだ」。
働く妻ヘレンと家庭を守る夫ボブ。どこか現代の世相を反映した設定のようにも思えるが、このアイデアは、前作が公開された14年前からすでにあったとバード監督は語る。「ボブとヘレンの役割が逆転するという展開は、実は最初にあった構想なんだ。それが時代の流れに即しているという見方もあるし、確かに長年、男性がマイクを独占し、言いたい放題だったという歴史もある。ただ、大昔から人間の半分は女性であり、彼女たちが何かを主張し行動に移そうとすることはとても自然なことで、決して新しいテーマではない。
ところで、バード監督といえば、実写映画、それも誰もが知っている超大作『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(11)のメガホンも取ったことでも話題となったが、その経験は、アニメ・クリエーターにとって、とても大きな意味を持つと熱弁する。「トム・クルーズとは全く面識はなかったけれど、『Mr.インクレディブル』をとても気に入ってくれて、僕に声を掛けてくれたんだ。初対面のときに映画について5時間くらい熱く語りあったが、何が素晴らしいって、彼のアニメ・クリエーターに対するリスペクトの気持ちには驚かされたよ」と興奮気味に語る。 「アメリカの映画業界では、まだまだアニメの地位は低く、クリエーターを見下すような偏見みたいなものが根強くある。ところがトムは、アニメの演出も実写の演出も、同等のものとして感じていてくれたんだ。だから、彼から“実写映画に興味あるかい?”って連絡が来たとき、“もちろん!”と即答したよ」。アニメの世界で磨いた演出力がいかにレベルの高いものか、バード監督はそれを証明する使命を自ら負うことになるが、その結果は言わずもがな、大ヒットした映画を観れば一目瞭然だ。
そして、バード監督のアイデアに溢れた演出力は、自身の名声だけでなく、アニメ・クリエーター全員の希望の光となった。実写で培った経験は、間違いなく本作へと還元されているが、忘れてならないのが、彼を支えたピクサー・スタッフの力。その中には成田裕明(エフェクト・テクニカル・ディレクター)、原島朋幸(アニメーター)ら日本人クリエーターも名を連ねる。「世界中から優秀な人材が集まってくることで、作品がより豊かな表現になることはうれしいこと。
映画『インクレディブル・ファミリー』は公開中。