【写真】音楽劇『道』蒔田彩珠インタビューフォト
近年、彼女のことを気になっていた人は多いのではないだろうか? ドラマ『重版出来!』や『anone』、映画『万引き家族』などの注目作で、常に印象的な役柄を演じている彼女。今年の夏はダブル主演映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』も公開、その演技が好評を博したのも記憶に新しい。
実は子役としてのキャリアは長い彼女。しかし、これまで舞台は経験したことがなかった。
「マネージャーさんからの勧めで、そろそろ舞台挑戦してみる?と言われて。それでオーディションを受けさせてもらったんですけど、まさか受かると思っていなかったので……。決定したという知らせを聞いて固まりました(笑)」。
舞台というものに対し、それまで彼女が持っていたのはやはり“恐怖心”。ドラマや映画は失敗してもまた撮り直すことができるが、舞台ではそれができない。しかし彼女が持っていた不安を払拭したのは、意外にもこの『道』のオーディションだった。
「デヴィッド・ルヴォーさんにお会いして、舞台への不安がなくなったんです。ルヴォーさんが『道』という映画をとても愛していて、どういう舞台にしたいのかというのを、オーディションの段階でたくさん私に語ってくださって…この方なら安心してお芝居をぶつけられる、と感じて。そこで一気に不安はなくなりました」。
インタビュー時は、稽古開始前。
「草なぎさんとはまだお会いしてないんですけど、とても優しそうな印象で。そんな草なぎさんがどんな形でザンパノを演じるんだろう…とか、いろいろと想像がつかないことがたくさん。でも、毎日初めて経験することばかりなのかなと思うと、そこは純粋に楽しみです」。
オーディションでの経験も大きいのだろうが、これから経験する未知の“舞台”に対して、彼女はとてもポジティブだ。その言葉からは“女優”という仕事、そして演じるということがとにかく好きで、楽しくて仕方がないという気持ちが強く伝わってくる。
「10歳のとき、『ゴーイング マイ ホーム』というドラマで初めてちゃんとお芝居をさせていただいて。その時、『お芝居ってこんなに楽しいんだ』って思ったんです。そこから今まで私、お芝居をしていて嫌な気持ちになったり、嫌な現場を経験したことがないんですよ。
そして「このお仕事をずっと好きでいたいからこそ、新しいことにはどんどん挑戦していきたい」とも。それは“子役”から“女優”への階段を上る中で、その挑戦が自分にとって必要なものであることを実感しているからだ。
「今までは、周りの俳優さんが自分に合わせてくれたことが多かったんですね。でも最近になって、ちゃんと自分も周りの方のお芝居を“受け取って返す”というのが必要なんじゃないか、と感じるようになって。自分から積極的にコミュニケーションを取って、お芝居をキャッチボールしていかなきゃいけないな、って」。
この意識の変化はやはり、映画『志乃ちゃんは~』の体験が大きかったよう。
「ダブル主演だったんですけど、同年代の子たちと一緒に、自分たちが中心になって作品を作ること自体が初めてだったんです。そこで大きく意識は変わったような気がします」。
実は蒔田はこの『道』のオーディションの際、ギターを持参して「あの素晴しい愛をもう一度」を歌ったという。映画の中でもキーとなる重要な曲であり、猛練習の末撮影に挑んだというこの曲が、彼女の次の“道”を開くことになったというわけだ。
「俳優の仕事って、現場が変われば演技も感情もガラリと変わる。新しいことを経験し続けていけるという他にない職業ですし、そこが好きなんです。だから“お仕事をしている”というよりも、“好きなことをしている”という今の感覚でずっと続けていくことができれば。それが理想です」。
大作への出演が、彼女を確実にまた成長させてゆくに違いない。そんな彼女の記念すべき初舞台、しっかりとその目に焼き付けたい。(取材・文・写真:川口有紀/スタイリスト:岡本純子/ヘアメイク:石川奈緒記)
音楽劇『道』は、12月8日~28日まで東京・日生劇場にて上演。