【写真】来日したスパイダーマン役のトム・ホランド
■新作ごとにクオリティが上がる『アベンジャーズ』に感服
『アイアンマン』をはじめ、マーベル映画の王道からこのシリーズの虜になったという山崎監督だが、意外にも一番好きな作品は、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』なのだとか。「コミック原作ものって『バットマン』以降、どちらかというとダークな世界観が多いじゃないですか。そんな中にあって、あのコミカルなノリというか、コメディでありながらジーンと胸を打つ作品が個人的に大好きなんですよね。特にロケットというアライグマのようなキャラクターは凄く気に入っています。僕がもし、マーベル映画を作らせていただけるのなら、断然、ああいう映画を撮りたいですね」。
さらに山崎監督は、『ドクター・ストレンジ』も好きな作品の1本に挙げる。「これはまた、ちょっと毛色が変わっていて、(事故によって魔術師に転身するという)ルールがわかるようでわからない、実はもっと奥深いものがありそうで面白いですよね。あとは東洋のニュアンスを使っているところもいい」と力説する。そんな『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の面々とドクター・ストレンジがアベンジャーズに初参戦し、ついに姿を現した最凶最悪のラスボス“サノス”と世界の存亡を懸けて戦うのが、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』。
山崎監督は、迷うことなく「これまでの『アベンジャーズ』の中でも最高傑作だった」と太鼓判を押す。その理由について山崎監督は、「凄まじい物量なんですが、心情に沿ってアクションが展開していくので、その都度スカッとするところもあれば、グッとくるところもある。
■滅びゆく美しさ…その悲劇性はもはやシェイクスピア劇
そして、同作を語る上で避けて通れないのが、最凶最悪の敵として登場するサノス。このキャラクターこそが、作品を成功へ導いた最大の要因だと山崎監督は語る。「説得力があるところが恐ろしかったですね。危険思想を持っているけれど、言っていることに重みがあるというか、現代の思想とリンクしているところが深い。わかりやすい悪ならいいんですが、彼自身、痛みを味わいながら、頼まれもしないことをよかれと思って一生懸命やっているところがある。だから、完全に悪として捉えることができない」と胸の内を明かす。また、普通に“実在”しているサノスに驚いたという山崎監督は、「まるで生身の俳優のように延々と出てきて、平気でお芝居をしている。
さらに、「私利私欲だけで出てきた悪だと、あそこまで強いと嘘臭くなるんですが、サノスの中心には揺るぎない意志がある。だから、アベンジャーズがあの手この手を尽くしても倒せない。たぶん、それは“意志”がカタチになっているから。生き物としての強さなら隙はあったと思うけれど、彼は“精神体”、殺せないものなんですよね」と、サノスに対する畏怖の念が炸裂する。
愛が強すぎるがゆえに、「余計なことが生まれてしまう」という構図も見逃せないと山崎監督は指摘する。「例えば、(同作の登場人物である)ヴィジョンとスカーレット・ウィッチ、ピーターとガモーラの恋、さらにはサノスとガモーラの親子愛…よくよく考えると、“愛”が強すぎるためにいろんなことが発生してしまう。黒澤明監督の『影武者』もそうですよね。愛する孫にいいところを見せたいがために武田軍は滅亡の道をたどる。滅びていく美しさ。なぜ、そんなのことために…という悲劇性は“シェイクスピア的”な領域に達していると思いました。
そして来春、いよいよ『アベンジャーズ/エンドゲーム』が公開される。MCU20作目、アベンジャーズの集大成として、同作に山崎監督は何を期待するのか。「『インフィニティ・ウォー』で“悲劇”という風呂敷を広げたので、同じ映画人として、ここからどう次につなげて収拾するんだろうと、ちょっと不安な部分もありますね。生半可に元に戻すことは許されないというか。ぜひ、ファンが納得できる方法でみんな戻ってほしいとは思いますが。そういえば、予告編の映像で、タイトルの「A」の字がバラバラなものが集まって再構築されていましたよね。だからきっと、なんらかの方法で戻ってくれるんじゃないですかと、密かに期待しています」と笑顔を見せていた。(取材・文:坂田正樹/撮影:高野広美)