漫画大賞2017の大賞を受賞した人気コミックスを実写化した『響 ‐HIBIKI‐』。昨年公開された同作は、欅坂46の平手友梨奈が、突如として文壇に現れた天才女子高生作家・鮎喰響役で映画初出演にして初主演を果たし、第31回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞の新人賞を受賞するなど、注目を集めた。
Blu‐ray&DVDリリースを前に、監督の月川翔(『君の膵臓をたべたい』『センセイ君主』ほか)が、「役者に向いている」と平手について語った。

【写真】平手友梨奈が天才女子高生作家を好演!『響 ‐HIBIKI‐』場面写真

 映画化スタートに向け、月川監督は平手のもとに赴いた。

 「最初、平手さんはほぼ喋らなくて、何を考えている人なんだろうと思いました(笑)。そして2回目に会ったときの最後に『監督は、最後まで向き合あってくれますか』と言われたんです。それまで全然目を合わせなかったのに、そのときだけこちらを見てハッキリと。あ、この人に嘘はつけないなと思いながら、覚悟を持って『もちろんです』と答えました」と振り返った月川監督。


 出演が決定すると、平手とともに「響ってどういう子なんだろう」と、キャラクターを紐解いていくことに注力する日々が続いた。重ねられた話し合いのなかでも、特に月川監督の印象に残っているのは、最初に交わした以下のやりとりだった。

 「『何が不安ですか』と聞いたら、『演技って嘘をつく感じがして嫌です。今まで平手友梨奈として嘘をつかずに活動してきたものが台無しになってしまうのではないかと思うと不安なんです』と言うんです。そして『演技ってなんですか?』という、どストレートな質問をされてしまって」と苦笑い。

 月川監督は、「響が生まれてからと同じ時間を平手さんが生きることはできないけれど、響がどう生きてきて、どう行動する子だろうと想像して表現することが演技なんじゃないか。
そうやって響を演じることに嘘はないんじゃないか」と答えた。そしてそこから響をどんどん掘り下げていき、「クランクイン前はとてもヒリヒリしていましたが、クランクインのときには平手さんが響のことを全て納得できていたので、以降は微調整だけで済みました」と述懐した。

 クランクインは作家・鬼島仁役の北村有起哉を蹴るシーンだったが、平手は先輩俳優に全く臆することなく初シーンをこなし、実は同日が誕生日だった北村は「とても嬉しいバースデイプレゼントになりました」と笑って帰っていったとか。また、響の担当編集者・花井ふみ役の北川景子と平手との息も初日からぴったりと合い、そのあとに撮影されたゴスロリファッションのシーンの撮影後には北川から「平手さんのファンになっちゃいました」とのメールが送られてきたそうで、監督も、序盤から生まれていた平手と北川との信頼関係を感じていたという。

 クランクアップはドローンを使っての撮影だった。ほとんどのスタッフの作業が終了していたにも関わらず、みなが残って平手のクランクアップを見届け、平手も「まだ響でいたい」と涙を見せた。
彼女自身がチームとともに響と「最後まで向き合えた」ことを感じた瞬間だったのだろう。

 さて、これまでにもヒット作を手掛けてきた月川監督だが、『響-HIBIKI-』という作品、そして平手友梨奈に出会い、「僕はお客さんが何を求めているのかというところに向かって作品を作ることが多かったけれど、今回は、この作品はどうあるべきかということだけに集中して作れた。毎回このやり方を通すのは大変だけれど、モノづくりの原点に立ち返れた感じがあります」と刺激を受けた様子。

 また、とにかく響はハマり役だったと評判を集めた平手について、本作だけに留まらず「役者に向いていると思った」と話した。

 「映画の現場というのは、同じ時間を何度も演じなければいけない。そうするとだんだん新鮮さが失われがちです。
でも平手さんの場合は、カットがかかって、またここからスタートしますとなると、タイムリープしたかのように、またその時間を生き直すんです」と称え、続けた。

 「北川さんや小栗(旬)さんのように安定したお芝居の方が相手だと、何度やっても同じように芝居をするし、高校生パートのようにテイクによってお芝居が変わる場合は、それに合わせて彼女の演技も変わる。すーっとそれができる。役者としての素質は十分にあると思います。技術で役をこなすということはしないと思うので、彼女が納得できる役ならば、またすごい力を発揮すると思います」。

 そして最後にパッケージ化に向けてメッセージを寄せた。
「納得ができずにやってしまったというシーンはひとつもありません。隅々まで観ていただいて大丈夫ですと自信を持って推せる映画です」。(取材・文・写真:望月ふみ)

 映画『響 ‐HIBIKI‐』のBlu-ray&DVDは3月6日(水)発売、同日レンタル開始。