【写真】左手には指輪も 前田敦子、インタビューカット
本作は、日本・ウズベキスタン国交樹立25周年と日本人が建設に関わったナボイ劇場完成70周年が重なった2017年、その記念プロジェクトとして実現した両国の合作映画。テレビ番組の取材でウズベキスタンを訪れたレポーターの葉子(前田)が、異国の地でさまざまな出来事を通して成長していく姿を描く。そのほか、加瀬亮、染谷将太、柄本時生が葉子に帯同する撮影隊役として参加し、ウズベキスタンの人気俳優アディズ・ラジャボフが通訳兼コーディネーター役で出演している。
演じる役柄について、「愛想笑いをしないでほしい」と撮影前に黒沢監督から指示を受けたという前田。ところが、大勢の人々が行き交う賑やかなバザールのシーンでは、ゲリラ的な撮影が多く、エキストラも一般の方も混在する中で撮影するため、カメラの中央にいる前田へ注目が集まってくる。この状況について前田は、「道ゆく人に見つめられたり、声をかけられたりすると、つい反応したくなります。葉子を演じているときは、声をかけてくるかたを拒まなければならないので、申し訳ない気持ちになりました」と振り返る。
前田が演じる葉子は、過酷なリポートをこなしながら、その一方で、「歌手になりたい」という胸に秘めた熱い思いがある。劇中、前田は、ナボイ劇場と標高2443mの山頂で、エディット・ピアフの名曲『愛の讃歌』を歌うことになるが、しばらく歌手活動から遠ざかっていたため、不安で仕方なかったと告白する。「黒沢監督から『歌を歌ってほしい』と言われ、しかもそれが、『愛の讃歌』と聞いたときは、『難しい曲だな』と、正直思いました。さらに歌詞の内容をより深く理解したときは、胸にずっしりくるものがあって、この曲のすごさに、負けそうになりました…というか、完全に負けました(笑)」。とはいえ、山頂では5、6時間で8テイク、撮影が終わるころには、すっかり日焼けしていたという前田は、「今の自分を100%出し切るところまでやりきった」と晴れやかな表情。
本作を通して、「新しい挑戦は、成長につながる」ことを改めて実感したという前田。ちなみに今挑戦していることを尋ねると、「子どもが生まれたことによって、日常の全てが初挑戦。この経験も含めて、将来、自分が女優としてどうなっていくのか、すごく楽しみ」と声を弾ませる。さらに今回、前田が演じる葉子は、日本にいる恋人が心の拠り所で何度も連絡を取り合うシーンも描かれているが、母親となった今、「家族を見送る側になるとすごく心配。
しばらくは育児に女優に多忙な日々が続くと思うが、「新しい挑戦」を糧にして、また一皮むけた女優・前田敦子の姿を見せてほしいものだ。(取材・文:坂田正樹 写真:高野広美)
映画『旅のおわり世界のはじまり』は6月14日より全国公開。