女優の篠田麻里子が再び雪平夏見役に挑む。昨年2月の舞台『アンフェアな月』第2弾として『殺してもいい命』が21日から上演。
風変わりな女性刑事の活躍を描く秦建日子の小説「刑事 雪平夏見シリーズ」の舞台化で、テレビや映画で知られる『アンフェア』とは異なる女性的な面を感じさせるキャラクターが好評を博した。あれから1年以上が過ぎたが、今年2月には結婚とプライベートで大きな変化もあった。今度はどんな雪平夏見を見せてくれるだろうか。篠田に聞いた。

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 「自分なりの雪平夏見像はあるのですが、前作とはかなりストーリーも異なるので、今回初めて見る方でもすんなり入っていける作品だと思います」。

 雪平夏見は、個性あふれる人物だ。警視庁きっての美人で捜査一課の検挙率トップ、バツイチで男勝り、そして酒豪。

 「正義を根底に持つ人なので白か黒かハッキリしているので、演じやすい面もありますが、舞台で刑事モノを見せる難しさもあります。刑事モノの舞台って、あまり多くないですよね。事件を追うスピード感や緊張感を表現するのに映像ならすぐ場面転換できるんですけど、舞台では素早い転換ができないとか」。

 前回感じたそうした課題を踏まえ、演出についてはいろいろと話し合い、工夫がされているという。

 「転換もセットを工夫してスピードアップしているので、そこは注目していただきたいポイントの一つですね。
それから、小説だと行間から伝わる恐怖感があるじゃないですか。でもそれを言葉で出しちゃうと、あまり怖くなかったり。そこを演出で、また文字で説明を見せたりしています。原作では回想シーンが多いのですが、舞台ではそこに至るまでの説明が出てくるので、それはすごく戻りやすいし、見やすいかなって思います」。

 今年に入り結婚や、ドラマ『ミストレス~女たちの秘密~』(NHK総合)でのレズビアン役が話題になるなど、公私ともに充実した中、今回の舞台を迎える篠田。

 「家族が増えたってことが、少し雪平夏見に近づいたかな、と思いますね。守るべきものができたっていう。男っぽいですけど(笑)。プライベートに落ち着きがあるので、作品にすごく集中できています。家に帰るとホッとできる感じで、仕事モードをオフにできるので、すごい楽です」。 『ミストレス』では、レズビアンを公言する女性、須藤玲役が話題を呼んだが、周囲からの反響も大きかったそうだ。

 「エロい、と(笑)。
監督が、繊細に心の動きを撮る方で。セリフも一切関係なく自分の間でいいからって、充分に時間をくださったので、やりやすかったです。ただ、ラブシーンでジ~ッと見られてる感じが、ちょっと恥ずかしかったです。それと、最初に撮影して後で声録りをしたのですが、声だけっていうのも逆に恥ずかしかったです(笑)」。

 男性ファンのみならず、女性ファンからの反響が大きかったのも印象的という。

 「AKB48のような大人数の女の子の中で、私は割と男っぽいキャラだから、『女性が好きなんです』っていうファンの方も結構多かったんです。私を男として見ているのかな? って思うときもあって。そういうことが以前からあって、『ミストレス』では変に色をつけずに、そのまんまの自分を好きになってもらえる形で演じてみたんです」。

 インタビュー終了間際、一度犯人役をやってみたい、と笑った。

 「雪平夏見は刑事としての正義なんですけど、犯人にも犯人なりの正義があると思っていて、その気持ちを一度考えてみたいんです。どういう人生を歩んだら、そういう気持ちになってしまうんだろうって。そんな気持ちは分からないほうが良いのかもしれませんが、誰もが理解できないところにスポットを当ててみたいんですよね」。


 一人の女性として、女優として、環境も意欲も充実しきった篠田の芝居、期待大だ。(取材・文・写真:志和浩司)

 舞台『殺してもいい命』は、6月21日~30日まで東京・サンシャイン劇場にて上演。
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