【写真】3年ぶりとなる舞台への不安と期待を赤裸々に語る小栗旬
シリーズ完結まで残り2作となる今回の作品『ジョン王』は、英国史上最も悪評の高い王であろうジョンの治世の時代を描いた歴史劇。小栗は、イギリス王・ジョン(横田栄司)とフランス王・フィリップ2世(吉田鋼太郎)の間で立ち回り、生命力とユーモアにあふれ世の中をシニカルに見つめる若者“私生児”を演じる。本シリーズ4作品目の登場にして初の歴史劇への挑戦となる。
◆“演劇という筋肉”を盟友・吉田鋼太郎のもとで再生したい
本作は小栗にとって3年ぶりの舞台出演。「“さい芸(彩の国さいたま芸術劇場)”の舞台に立つのも『ムサシ』(2009年)が最後で、11年が経ちました。しばらくこのムードからずっと離れてしまっていて、あの当時の筋肉を呼び戻すことができるのかどうか、不安はあります。ただ自分の中では渇望している環境ではあるんです」と語る。「鋼太郎さんは、僕が一番受けてみたい演出家。演劇って筋肉みたいなところがあって、その筋肉が最近徐々に衰えてきているんじゃないかという思いがあった。そこを吉田再生工場で再生したいですね」と“盟友”吉田に全幅の信頼を寄せる。
◆「自分だけが置いてきぼりにされている不安があった」
さまざまな作品で着実にキャリアを築き上げてきている印象のある小栗だが、心中にはいろいろな思いがあったという。
本シリーズを始めた蜷川幸雄さんには2003年の『ハムレット』から『お気に召すまま』『カリギュラ』など多くの作品で演出を受けたが、吉田いわく晩年は「けんかして遠ざけられて」おり、小栗本人も今回のオファーに「呼んでくれるんだ。ありがたいなー」と思っていたそう。蜷川組での舞台は「毎回大変でした。怒られてばっかりで」と振り返るが、「今となってみたら、作品に対する読み解きみたいなものの足りなさを痛感します。理解していないのにやっていたことが山ほどありました」と明かす。「20代前半だったので、どうしても人生経験において理解できないことがいっぱいありました。今この年齢になっても理解できないこともありますけど、あの頃よりはかみ砕けるようになっているかなと思います」。
◆自分に期待しなくなる時間に疲れ果てていた
蜷川さんに言われた言葉で強く印象に残っている言葉があるという。「“楽なとこに行き過ぎるなよ小栗”って。どんなことも楽な仕事だと思ってないですが、ある時ある答えが明確に提示されている場所に行き続けているような瞬間が非常に多かった。
◆共通認識を持って交わせる“演劇の話”が楽しみ
「鋼太郎さんや、横田さん、竜也が出ている舞台を見に行くと、“俺はあそこに入ることはないんだなー”と思っていた。公演後一緒にお酒を飲みに行っても、みんなが同じ話題で盛り上がっている中に入れなくてつまらなかった。僕はよく酒を飲んで演劇論を交わしている人みたいなことになっていますけど、そんなことはなくて(笑)。でも、この人たちとは自然に演劇の話になる。今回共通認識を持って話ができるのが本当に楽しみです」と子どものような笑顔を浮かべる。
◆吉田鋼太郎、横田栄司…共演陣も絶賛する舞台人・小栗旬の“色気”
舞台人・小栗を「蜷川さんに鍛えられた俳優はある種の匂いがある。
「嫌われて戻ることがないと思っていた場所に戻ってこられてよかったです」と語る小栗。さまざまな思いの詰まった作品となることは間違いなさそうだ。(取材・文:編集部 写真:松林満美)
彩の国シェイクスピア・シリーズ第36弾『ジョン王』は、2020年6月に埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて上演。名古屋、大阪公演あり。