【写真】傑作アニメーション『動物農場』(1954)フォトギャラリー
映画『太陽と月に背いて』『ソハの地下水道』などで知られるポーランド出身の女性監督アグニェシュカ・ホランドがメガホンをとり、命の危険を顧みず真実を追い求めた実在の英国人記者ガレス・ジョーンズの不屈のドラマを描く本作。主人公ジョーンズを次期ジェームズ・ボンド役ともうわさされる実力派俳優ジェームズ・ノートンが演じ、ヴァネッサ・カービー、ピーター・サースガードらが共演する。
『動物農場』は、『1984年』で知られる英国生まれの小説家ジョージ・オーウェルによって1945年に発表された。登場人物を人間ではなく、ブタやウシやヒツジといった動物に代えて、権力構造やスターリン主義への痛烈な批判を寓話的に描き出している。
1954年には英国で長編アニメ化され、2008年には三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーの配給で劇場公開後、DVD化された。そのジャッケット裏面には、独裁者をブタに見立てたこの作品に対して、宮崎駿の「歴史は繰り返す。支配する者とされる者。その構造は変わらない、ただ… 今、豚は太っていない。」というコメントが掲載されている。また、これまで幾度となく日本でも出版され、石ノ森章太郎がコミカライズ、開高健が邦訳で参加している。
映画『赤い闇』は、そんな『動物農場』をジョゼフ・マウル演じるオーウェルがタイプしているシーンから幕が上がる。さらに、興味深いサブストーリーも盛り込まれている。実は、ジョーンズのソ連における取材こそが『動物農場』の誕生のきっかけとなっているのだ。
ほかにも劇中では、ジョーンズとオーウェルの意外な接点に加え、終盤には、映画監督のオーソン・ウェルズが『市民ケーン』で描き、自ら演じた米国の新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストも登場するなど、ドラマティックなストーリーのうねりが知的好奇心を刺激する。『動物農場』の農場主の名前が“ジョーンズ”であることも興味深い点だ。
映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』は8月14日より全国公開。