昨年、21年ぶりに36ヵ所、37公演という全国ツアー「この街ツアー2019」を行った歌手の森高千里。その際に訪れた全国の“街”と森高自身の素顔が詰まったフォトエッセイ『森高千里「この街」が大好きよ』(集英社)が25日に刊行された。
【写真】全国ツアーで日本全国を旅した森高千里
21年ぶりとなった昨年の全国ツアーでは県庁所在地だけではなく、初めて訪れる街でもライブを開催した森高。このツアーでは、「せっかくだから自分の足ですべての街を歩いてみよう」と会場入りする前に、周辺の観光名所だけでなく、その街の人々の生活を感じることができる商店街、自然あふれるスポットを巡り、ご当地グルメも食べ回った。
ライブのMCでは、その街歩きのエピソードを話したり、ツアータイトルにもなっている『この街』を歌うときには、曲中のセリフに地元の名産品を織り込んで会場を盛り上げた。さらに全国ツアーに合わせて開設したインスタグラムには、街歩きの写真を投稿しファンを楽しませた。
『森高千里「この街」が大好きよ』は、昨年1年間の全国ツアーの旅の記録を集めたフォトエッセイだが、森高は「本になるとは思っていなくて、マネージャーさんやメイクさんが携帯のカメラなどで撮ったものなんです」と裏話を明かし、「だからこそ、素の自分が出ていると思うんです」とはにかむ。旅の写真と共になかなか見ることができない普段着姿の森高を楽しめるのも見どころだ。
「宝物のような本になりました」と笑顔を見せる森高だが、そこにはまた全国ツアーを行えたという願いも込められているように感じられた。
デビュー以来、20代は精力的にツアーを行っていた森高。そこから結婚、出産、子育てで“歌うこと”から遠ざかっていたが、デビュー25周年となる2012年をきっかけにライブ活動を再開する。「25周年のときに周りの人たちから『おめでとうございます』とか『なにかやらないんですか』という声をいただいて、すごくうれしかったんです。
ブランクもあり「できるのか」という不安もあったというが、それよりも「ここでやらなければ、もう二度とできないだろうな」という気持ちが勝った。そして森高のエンジンが掛かったのは家族のサポートがあったからだ。「子どももだいぶ大きくなっていましたし、主人に相談したときも『いいんじゃない』と応援してくれたので、一歩踏み出せたと思います」。@@separator ライブ活動も年々数を重ね、昨年の全国ツアーを決断したときも「もちろん『やれるのかな』という不安はありました」というが、「いまやらなければ、もう全国ツアーはやれないかもしれない。後悔したくない」という思いで前に進んだ。
「20代の頃は約7ヵ月で60公演ぐらいの全国ツアーをやっていましたが、昨年のツアーは週末を中心に1年かけてやるスケジュールだったので、ハードという感じではなかったんです。ただ逆に1年間ずっとツアーを行うということで、体調管理にはより気を使いました」。
このツアー中に50歳を迎えた森高だが、やってみて「やっぱりステージに立って歌うことは楽しい」と改めて実感したという。さらに20代のときとはまったく違う感覚も得た。
「20代の全国ツアーも楽しんでやっていましたが、今振り返ってみると当時は『伝えなきゃ』『歌詞や段取りを覚えなきゃ』という思いが強く、自分自身にもすごくプレッシャーをかけていました。失敗したときの落ち込みもすごかったんです。
当時は「40代、50代になってもステージに立っているなんてまったく想像できなかった」と語った森高。同じ曲でも20代とは表現方法も変わった。「いまだからできる表現」をファンに聴いてもらえることも、長く活動を続けてきたからこそできる醍醐味(だいごみ)だ。
実は昨年から2021年まで2年半をかけて全都道府県をライブで回る予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期もしくは中止になってしまった。「去年の流れのなかで、今年もライブを開催したかった」と率直な胸の内を明かしていたが「ちゃんと準備が整えばまた皆さんにお会いできると思う」といまは前向きに捉えているという。7月には無観客の配信ライブを行った森高だが「やっぱり拍手とか声援がパワーになっているんだと改めて実感しました」とファンと交流できるライブの再開を心待ちにする。
「何歳までやれるかはわかりませんが、ファンの皆さんが望んでくださる限り、ライブは続けていきたいです。そして、昨年全国をまわれたことは、とても貴重なことでした。ちょっと寂しい商店街もありましたが、若い世代の方が新しいことも始めていたりして、元気をもらえました。改めて日本の四季の美しさや各地にすてきな街があることを知り感動しました。
『森高千里 「この街」が大好きよ』は集英社より発売中(1600円+税)