【人物コラム/田幸和歌子】夏ドラマで『半沢直樹』(TBS系)と『親バカ青春白書』(日本テレビ系)に出演していた今田美桜。『私たちはどうかしている』(日本テレビ系)で横浜流星と、10月9日にスタートした『タリオ 復讐代行の2人』(NHK総合)では岡田将生とW主演を務める浜辺美波

10月15日にスタートする『ルパンの娘』続編に出演するほか、2日に公開された映画『小説の神様 君としか描けない物語』で主演を務める橋本環奈。今、映画・ドラマで活躍している若手人気女優にはある共通点がある。

【写真】「等身大」「親近感」が人気の条件!? “アンダー160cm”の若手女優たち

 さらに続けると、放送中のNHK連続テレビ小説『エール』に出演中で、10月スタートのTBS火曜ドラマ『この恋あたためますか』で主演する森七菜。11月放送開始のNHK連続テレビ小説『おちょやん』に主演する杉咲花。今秋放送『世にも奇妙な物語’20秋の特別編』(フジテレビ系)に出演の広瀬すず。今年『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)で大ブレイクを果たした上白石萌音

 今をときめく売れっ子女優の彼女たちの年齢は、今田(23歳)、浜辺(20歳)、橋本(21歳)、森(19歳)、杉咲(23歳)、広瀬(22歳)、上白石(22歳)と20歳前後。

 そして彼女たちの公式プロフィールで身長を見てみると、今田157cm、浜辺156cm、橋本152cm、森154cm、杉咲153cm、広瀬159cm、上白石152cmと、全員身長が160cm未満ということだ。

 150cm後半の今田や広瀬は同年代の女子の平均くらいであり、一般的な基準からすると「小柄というほどでもないような?」と思う人もいるだろう。また若手でも、162cmの清原果耶(18歳)、163cmの永野芽郁(21歳)、さらに169cmの中条あやみ(23歳)のような長身女優だってもちろんいる。

■高身長が多い 30代の主演女優たち

 では30代の主演クラス女優はどうだろうか。

 秋ドラマに出演する女優を見てみると、『監察医 朝顔』(フジテレビ系)主演の上野樹里(34歳)が167cm。
『ルパンの娘』(フジテレビ系)主演の深田恭子(37歳)は163cm。『七人の秘書』(テレビ朝日系)主演の木村文乃(32歳)は164cm。『危険なビーナス』(TBS系)出演の吉高由里子(32歳)は161cm。10月7日放送の『東京タラレバ娘2020』(日本テレビ系)に出演した榮倉奈々(32歳)は170cm。29歳だが『#リモラブ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)主演の波瑠は164cmと高身長だ。

 そのほか、戸田恵梨香(32歳)が164cm、綾瀬はるか(35歳)が165cm、北川景子(34歳)が160cm、桐谷美玲(30歳)が163.5cmと、数字ばかりズラズラ並べてしまい恐縮だが、明らかに30代女優たちの方が、現在の20歳前後の売れっ子女優たちよりも平均的に長身なのだ。
@@separator■求められるヒロイン像の変化

 ではなぜ20歳前後の女優には小柄な女優が多いのか。

 テレビドラマのメイン視聴者たちの高齢化により、主演は30代が務めることが中心となり、若手女優のメインの活躍の場が映画になっていること。しかも、映画では「壁ドン」系などの漫画実写化が多いことから、相手役となる男性の俳優たちと並んだときの“身長差”が理想的であることも一つの理由に挙げられるだろう。

 さらに、注目したいのは、20代若手女優の芸能界入りのきっかけや時期である。

 杉咲花は子役時代からの長いキャリアがあるし、浜辺美波は小学生の頃に「東宝シンデレラオーディション」のニュージェネレーション賞を受賞し芸能界入り。上白石萌音も、小1からミュージカルスクールに通い、中1のときに「東宝シンデレラオーディション」で審査員特別賞を受賞し芸能界入り。
橋本環奈が世間に「見つかった」のはご存知の通り、地元・福岡のイベントにアイドルグループのメンバーとして参加したときの「奇跡の1枚」がきっかけだが、地元で芸能活動を始めたのは小学3年生の頃から。

 また、今田美桜は16歳のときにスカウトでデビューしたとはいえ、初期は「福岡で1番可愛い女の子」をキャッチコピーに地元での活動をメインとしてきた。森七菜は中3のときに地元・大分でスカウトされ、すぐにWebCMのオーディションで選ばれて芸能活動をスタートしている。

 30代の主演級女優では、榮倉、桐谷、北川らファッション誌「Seventeen」モデル出身が多いのに対し、20歳前後の若手女優の多くは、子役あるいは10代半ばくらいまでに芸能界入りし、さまざまな経験を積んだうえで、主役級に上り詰めたタイプが多い。

 ドラマで描かれる主人公がキラキラ輝く憧れの存在だった時代には、周りから明らかに浮き立つスタイルの良さも求められた。それに対し、今は「ヒロイン至上主義」ではなく、脇のキャラ一人ひとりの物語が描かれる群像劇が増えているため、等身大で親近感のある女の子が求められるようになってきた面もあるだろう。

 現在20歳前後で活躍をする若手女優が、成熟した女性となり、アラサーくらいの年齢になったとき、どんな作品・どんな役柄で新たな魅力を見せてくれるのか。その変化も含め、先々まで長く楽しみに見守っていきたい。(文:田幸和歌子)

<田幸和歌子>
1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムをさまざまな媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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