映画、ドラマと着実に出演作を重ね、印象に残る芝居を見せてきた女優・山田杏奈。最新作『ジオラマボーイ・パノラマガール』では、平坦で平凡な生活にパッと輝きを与えてくれた男の子に恋をし、もがく女子高生を好演した。

その表情は多彩で、決してキレイなものばかりではない…そこに山田の考える女優道が垣間見える。

【写真】目力に引き込まれる 山田杏奈、撮り下ろしインタビューフォト

 多くの世代から支持を受けているカリスマ漫画家、岡崎京子の人気コミックの実写化。山田自身も「岡崎さんの作品で描かれている女の子は、言葉使いや行動が突拍子もないのですが、すごく魅力的で痛々しい部分がある。自分にも通じるところがあり、いつかやりたいと思っていたので、すごくうれしかった」と笑顔を見せる。

 一方で、だからこその怖さも感じていたという。「ハルコが魅力的に見えないと作品として成立しない。
そこは大きな不安でした」と心情を吐露するが「でも瀬田(なつき)監督の作品はずっと観てきたのですが、すごく女の子を魅力的に描く監督さんだったので、自分でも最大限の努力はするつもりでしたが、監督に身を委ねようという気持ちで臨みました」と語る。

■大切にしている言葉「女優は汚いところを見せるもの」

 「不安があった」というが、山田の演じたハルコは劇中で躍動する。過去の作品でも感じたことだが、山田が演じるキャラクターは、いい意味でキレイな部分だけではないリアリティがあり、ハルコにもそれが強く感じられる。

 その言葉に山田は笑顔を見せると「私は以前『女優は汚いところを見せるものだから』という言葉をかけていただき、それをとても大切にしているんです。だからそういってもらえるとうれしいですね」とつぶやく。

 ちょうど山田が高校に進学し『あゝ、荒野』という映画に出演する際に、キャスティングを担当する人に言われた言葉だという。


 「ちょうどそのころって、自分がどう見えるかって気にする年代。こういう仕事をしていれば、自分がどの角度がいいかとか意識してしまう。だからこそ、声をかけてくれたんだと思うんです。すごく大事な言葉です。スクリーンにはどんなに不細工で汚く見えてもまったく気にしないです」とためらいなく話す。@@separator■来年20歳に「周りの人を大切にしながら、楽しめる人間でありたい」

 10歳のときに開催されたオーディションで芸能界入りした山田。
15歳のとき「目力がある」と言われたことで、自身の持ち味を意識したという。そこから、いろいろな人から少しずつ山田の“個性”を伝えてもらえるようになった。そのことで「自分にしかできないことをしっかり考えて武器にしていきたい」と思えるようになった。
 
 でも決して満足はしていない。「まだまだ課題だらけ。自分がやった仕事を『よくできた』と思ったら仕事を辞めちゃうと思うんです」ときっぱり。
続けて「雰囲気とかで使っていただけている部分もあると思います。そこにしっかりと中味も伴っていかなければダメ」と自身に厳しい視線を向ける。

 来年1月、20歳を迎えるが「自分のやりたいことを追いかけ、言いわけをしないでやっている人はすてきだなと思う」と理想像を語る。高校を卒業し、現在は芸能の仕事一本で勝負しているが、「しっかり周りの人を大切にしながら、楽しめる人間でありたい」と抱負を述べる。

 「1年前に撮影していたときは東京オリンピックも開催される予定で、映画に映し出されている東京は、いまとまったく違うものになっていますが、自粛明け最初に初号の試写を観て、すごくパワーをもらえました」と鑑賞後の感想を述べた山田。若さゆえの脆(もろ)さ、儚(はかな)さが、いまの停滞した世の中を前に推し進めるパワーとなるのかもしれない。
(取材・文:磯部正和 写真:ヨシダヤスシ)

 映画『ジオラマボーイ・パノラマガール』は11月6日より新宿ピカデリー、ホワイト シネクイントほか全国公開。