根強いファンを持つ“ゴジラ”シリーズの最新作、テレビアニメ『ゴジラS.P<シンギュラポイント>』の主題歌「in case...」を担当するのが6人組の“楽器を持たないパンクバンド”BiSHだ。既存のジャンルに収まらない活躍をみせる彼女たちに、作品や主題歌に関するエピソード、活動の軸にある自身のファン“清掃員”へ向けた思いを尋ねた。
【写真】快進撃が止まらないBiSH 個性光るメンバーのソロカットも!
■ゴジラのテーマソングを超えるほど広く知ってもらいたい
『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』は、数多くの映画が製作・公開された“ゴジラ”シリーズの完全新作となる、国内初の連続テレビアニメシリーズ。女性研究者の神野銘(声:宮本侑芽)と男性技術者の有川ユン(声:石毛翔弥)という2人の若き天才が、周囲の人間たちと共に、人類に訪れる未曾有の脅威へ立ち向かう。そのOPテーマ「in case...」をBiSHが歌い上げる。
――長く愛される“ゴジラ”シリーズの最新作で、主題歌を務めると聞いたときの心境は?
アイナ・ジ・エンド(以下、アイナ):ゴジラはお父さんが好きなシリーズで、実家にもフィギュアが飾られていました。その影響で、大人になってから実写映画『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967年公開)を見たら、自分もミニラが好きになって。彼の鳴きマネをツイッターでも、何度かアップしています(笑)。だからこそ、今回のお話はうれしかったですし、レコーディングでは「精一杯歌わねば」と気合いを入れました。
セントチヒロ・チッチ(以下、チッチ):ゴジラには怖いイメージがあった一方で、普通の怪獣とは違い、人間味溢れる面白さもあると思っていました。BiSHも人間味があり個性溢れる面白いグループだと思っているので、一緒に作品を盛り上げていけるのがうれしかったです。
――主題歌「in case...」への思い入れや印象は?
アユニ・D(以下、アユニ):主題歌は私たちにとっても、作品にとっても偉大であると感じています。すべてにとって大切というか。また、元々あるゴジラのよく聴くテーマ曲は知らない人がいないくらい有名な楽曲ですし、とてもカッコいい仕上がりになっているので、あの曲を超えるくらい広まったらうれしいなと思います。
リンリン:サビで「難しければ 難しいほどいいね」と歌っていて、私はその歌詞が心に響きました。BiSHはメンバー内で作詞もしていて、物を作るときは簡単なやり方に甘えてしまいがちだけど、そうではなく、難しいやり方で頑張っていくように心がけています。サビの歌詞がその日常の自分と重なるようで、心に残るフレーズでした。曲の色合いもアニメで目立つネオンカラーとマッチしているので、作品と一緒に楽しんでもらいたいです。
――作品『ゴジラS.P<シンギュラポイント>』自体の印象は?
ハシヤスメ・アツコ(以下、アツコ):幼少期に見た実写版の思い出をたどりつつ、アニメ版は「こんなにもキレイなんだ」と思えました。千葉県を舞台にした映像を見ると「本当にある場所なのか」と感じられるし、非日常の作品でありながら、これは日常ではないかと混乱するほどで。劇中に登場する研究所にも行ってみたくなりました。
モモコグミカンパニー(以下、モモコ):怪獣同士が戦うのが怖そうと思っていて、正直、ゴジラをあまり見たことがなかったのですが、今回のアニメは見やすかったし、率直に「現代版ゴジラ」と思えました。作中にLINEのようなトーク画面が出てきたり、毎回、主人公の女の子・銘ちゃんの洋服がかわいかったり。親近感を覚える場面がたくさんあり、癖になる作品だと感じました。■約1年ぶりの有観客ツアーを完走した思い
本作のほか、4月スタートのドラマ主題歌など、多くのタイアップ作品を担当する一方で、ライブに情熱をかけるBiSH。
コロナ禍の影響による無観客配信ライブを経て、昨年12月24日には、332日ぶりに国立代々木第一競技場 第一体育館で有観客の単独ライブ「REBOOT BiSH」を開催。
そして、3月17日には、彼女たちの所属事務所・WACKのアーティストたちによる全国ツアー「WACK TOUR 2021 “TO BE CONTiNUED WACK TOUR”」を完走した。
――3月17日に全国ツアーを終えたばかりの皆さん。昨年行われた332日ぶりの有観客ライブを経たツアーの感想は?
アイナ:昨年から満足に外へ出られなくなり、そこから1年ほど経っても、まだ解放的に生きられる世界ではなくて。清掃員(ファンの愛称)の皆さんも、きっと、平日は一生懸命に働いて週末にはライブへ通えていた生活が変わってしまっただろうし、ツイートを見ながら「生きてるんかな」と不安を覚えていたので、会場で会えたのがうれしかったです。「生きててくれて、よかった」みたいな。すごく安心したし、誰かの生きがいでいられるうちにもっと頑張りたいと再確認できました。
チッチ:会場のキャパシティは通常の半数でしたけど、お客さんを前にしたライブをできたこと自体が幸せでした。全国ツアーでは、ほかのグループもいるからこその緊張感もあるし、セットリストの組み方を工夫する楽しさもあって。約1年ほど有観客ライブ自体ができなかったのもあり、それまでのBiSHと今のBiSHをつなぎ合わせるためにも、全国ツアーは大事な時間でした。
モモコ:無観客ライブと比べて、やっぱり、同じ空間に人がいるのといないのでは違うと感じました。昨年から現在までは、音楽が素晴らしい以前に「人って素晴らしい」と気付かされた1年でもあったし、人と触れ合う良さをかみ締めていました。
ハシヤスメ:素直に、ライブが開催できてよかったと思いました。
ちょうど昨年、全国ツアーを回っている最中に有観客ライブができなくなり、無観客ライブしかできない期間が1年ほど続いて。清掃員の皆さんやWACKのメンバーと会えてホッとしたし、みんなが無事であるのを確かめて安心できたのが何よりでした。
リンリン:全国ツアーは、昨年までの有観客ライブとは空気も違いました。初めのうちは、マスクを付けた客席を見ながら「みんな何を思っているのかなぁ」と考えていたけど、日が経つにつれて慣れていきました。会場では、思いやりと思いやりがぶつかるような優しさを感じていました。
アユニ:以前は生活の一部としてライブがあったけど、コロナ禍になってからは、今を生きている人たちがいろいろなことを考えていることに気が付いて。みんな、たくさんの困難にぶつかりながらも乗り越えた1年だったと思うので、同じ空間で好きな音楽を楽しめる時間を作れたのは本当に貴重でした。会場へ来てくれたお客さんも、足を運ぶべきか悩んでいただろうし、全国ツアーの場所にいたすべての人に「乾杯」と言いたいです。■コロナ禍で改めて問う“BiSHが6人でいる意味”
――昨今は、メンバー個々の活動も目立ちます。それでもなお、全国ツアーなどを経て思った“BiSHが6人でいる意味“とは?
アイナ:コロナ禍では落ち込んでしまい「明日、生きているのも苦しいな」と思う日もありましたけど、それでも、メンバーに会うと楽しいし私にとっては元気の源です。みんなも健康であるのが一番だし、そのためにもBiSHとしての活動をしっかりとやっていきたいと思います。
チッチ:私たちはBiSH結成のときから、一人一人がまったく違う色を放っているグループで。
ソロ活動ではそれぞれの好きが違ったり、輝く場所があるけど、一つになったときはまるで一人の人間のようだとも思うんです。体が合って、いろいろなパーツがあって組み合わさるというか。別々なのに一緒というのは不思議な感じですけど、それぞれが別の場所で得たものが、帰ってきたときに一つとして輝くのは、すごく意味があることだなと思っています。
モモコ:BiSHは、原点であり自分の帰る場所です。グループで活動していると、メンバーやスタッフさんからも刺激を受けたり、学べる瞬間がたくさんあって。いつでもみんなを応援していたいし、もっとたくさんのことを吸収していきたいです。
ハシヤスメ:元々は一人で動くのが好きで、一人っ子だからソロ活動も楽しいんです。ただ、一人で出演したドラマの撮影後に、メンバーと会ったときはすごくホッとして。離れていないと分からない感情だったし、素直に6人でずっとどこまでも行きたいなと思います。家族でもないし友達でもない、私にとってはいい意味でのビジネスパートナーのような。本当に、すごくいい関係性だなと思います。
リンリン:ソロ活動ではみんな、それぞれ異なるジャンルに取り組んでいて。
メンバーがそろったときは、ドラえもんの四次元ポケットの中身みたいだなと思っています。それぞれに「この仕事であれば、この子がいれば大丈夫」と言えるほどの力があるし、BiSHになったときは無敵になれるような感覚です。
アユニ:6人でいられる時間自体、今はすごく貴重だと日頃から思っています。それぞれソロ活動をしていても、一人一人が支え合っているのを身にしみて感じていて。つらいときは助けてくれるし、頑張りたいときは必死で応援してくれる。すてきな関係性だとコロナ禍でより気が付けたし、くじけず工夫してきた経験を糧に、これからも頑張っていきたいです。(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:ヨシダヤスシ)
テレビアニメ『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』は、TOKYO MX、KBS京都、BS11にて毎週木曜22時30分、サンテレビにて同24時放送。Netflixで毎週木曜1話分先行配信。
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