KADOKAWAは、令和の新たなホラー作家の発掘・支援を目的に、ホラージャンルに特化したフィルムコンペティション「日本ホラー映画大賞」を開催する。ホラージャンルに絞った一般公募のフィルムコンペティションは、日本初の取り組み。
【写真】「日本ホラー映画大賞」審査員
大賞受賞者には、応募作品のリメーク版、または完全オリジナル新作映画の監督を担ってもらい、作品は2022年劇場公開を目指す。また、アニメ部門賞も設置し、ホラー・アニメーションの先駆的才能を見いだし、支援していく。
審査員特別賞、運営委員会各賞受賞者にはそれぞれ賞金が用意され、大賞、各賞に選考された作品は劇場公開や配信展開を予定している。
最終審査の選考委員長は『呪怨』シリーズ、『樹海村』の清水崇監督が務める。選考委員には、元乃木坂46で女優の堀未央奈、映像クリエイター・監督・声優のFROGMAN、ロックバンド・Base Ball Bearの小出祐介、映画ジャーナリストの宇野維正と各界のホラーマスターが集結、それぞれが持つ斬新な視点から新しい才能を見いだす。
応募期間は、10月1日10時から11月30日23時59分まで。プロ・アマチュアを問わず、年齢、性別、国籍などの制限なく、誰でも応募できる。
募集対象作品は、実写映像作品では3~90分程度の未発表・完全オリジナル新作。アニメーション映像作品では10秒~30分程度の未発表・完全オリジナル新作。
大賞は、賞金20万円に加え、副賞として、運営委員会製作による新作長編映画の監督を担当してもらう。アニメ部門賞は賞金20万円。
このほか、▽将来性を感じさせる作品に贈られる審査員特別賞(賞金15万円)▽“オトナ”になる前の荒削りで、とがった、最新の感性とセンスを持つ原石に対して贈られるニューホープ賞(賞金10万円)▽前例のないアプローチに果敢に挑み、新しいホラー体験を与える作品に贈られる株式会社闇賞(賞金10万円)▽「配信動画で見たい!!短編作品」に贈られるオカルト部賞(賞金10万円)▽映画プラットフォームならではの視点で、見る者が怖さを「楽しめる」、映画ファンに広く愛される作品を選出するMOVIE WALKER PRESS賞(賞金10万円)▽優れたキャラクターが登場する作品に贈られる豆魚雷賞(賞金10万円)―の各部門が設置される。
選考委員長の清水監督は「ジャパニーズ・ホラーという言葉がもてはやされて早20年――。一時は、猫も杓子もホラーに飛びつき、業界は粗製乱造の末、一過性のブームのように投げ出してしまいました。結果……今も皆の記憶に残るJホラーのタイトルは僅か。どれも当時の作品群ばかり。世界へ打って出れる文化コンテンツのチャンスを自ら潰し、次なる世代の才能の発掘や育成にも目を向けようとしなかった日本の映画業界。何と嘆かわしい事でしょう?しかし、日本には古からの怪談文化や独自の精神世界に通じる“恐怖”の遺産がまだまだあります! 他国の文化や成果の真似をせず、独特の持ち味で打ち出せるDNAを我々は持っているはずなのです。少々自虐的ですが…僕を始め、20年前のJホラー製作者にすがっていてはいけないはずなのです。新鮮で斬新なホラーのセンスが見出される事を期待してやみません」とコメントしている。
その他、選考委員コメントは以下の通り。■堀未央奈(女優)
私は小さい頃は怖くて苦手意識のあったホラー映画ですが、いろんなジャンルのホラーを観るうちにホラー映画の底知れぬ魅力に魅了されました。忘れられないようなトラウマ級の話も、どこか考えさせられる奥が深い話もあり、ホラーというジャンル1つだけでもたくさんのメッセージ性が込められた"愛"のある作品をたくさん楽しんで観てきました。
日本のホラー映画は海外と比べて一段と日常に近く、身近な恐怖を描かれた作品が多いなと感じます。
これぞ!というものや、今まで観たことのないホラーなど、たくさんのアイディアや遊び心が詰まった素敵な作品に出会えることを心より楽しみにしています。
■FROGMAN(映像クリエイター・監督・声優)
今から100年以上前。私とゆかり深い島根県松江市にラフカディオ・ハーンなる人物が来日した。日本名、小泉八雲。ご存じ小説『怪談』を著し、日本の怪異と伝承を世界に紹介した人物だ。八雲の書物はアメリカを中心にベストセラーとなり、極東の島国に神秘的なイメージを世界が持つことになる。
元来、日本人は目に見えない何かに対して敏感で、想像力逞しい人々だった。妖怪のバリエーションの豊かさ。森羅万象に神が存在し、それらと共存してきた暮らしは、現在、アニメやキャラクターといった無生物に対して魂を吹き込むことに繋がると思っている。
私たちの想像力が再び世界にセンセーションを巻き起こす。そんな才能を楽しみにしている。
■小出祐介(Base Ball Bear/ミュージシャン)
自分がなぜこんなにもホラーというジャンルに惹かれるのか。
一番は、理解の追いつかない何かに出くわしたい、まだ知らない種類の恐怖を思い知りたい。
そんな「飽くなき怖いもの見たさ」なんだと思います。
『リング』を初めて劇場で観た時、エンドロールが終わり明転した満員の場内に、
「とんでもないものを見てしまった……」という空気が充満していたのが忘れられません。
とんでもない恐怖に出会えることを楽しみにしています。
■宇野維正(映画ジャーナリスト)
2010年代以降、ホラー映画は単に映画の一つのジャンルではなく、1970年代のある時期にそうであったように、映画の最前線にして、世界の優れた映画的才能にとって最も広くて大きな登竜門となっています。その前夜、1990年代後半から2000年代にかけてホラー映画表現を刷新して世界中に影響を与えてきたのは清水崇監督をはじめとする日本の映画作家たちですが、そろそろ次の世代の才能がこの国から出てきてもいい頃でしょう。日本のデビッド・ロウリー、アリ・アスター、デビッド・ロバート・ミッチェル、ロバート・エガースの登場に期待してます。