ゲーム『STEINS;GATE 線形拘束のフェノグラム』などで知られるシナリオライター、下倉バイオが脚本を担当したオリジナルアニメ『東京24区』(TOKYO MXほか/毎週水曜24時30分ほか)。本作は、東京湾に浮かぶ人工島(通称:24区)を舞台に、蒼生シュウタ、朱城ラン、翠堂コウキら幼なじみ3人組が、死んだはずの仲間からの着信をきっかけに、愛する街と人々の“未来の選択”を迫られるという物語だ。

今回は、3人組の1人であるシュウタを演じる榎木淳弥にインタビュー。作品の見どころに加えて、さまざまな作品でヒーローを演じる榎木が思う“ヒーロー像”などについて話を聞いた。

【写真】大きな瞳が印象的な榎木淳弥 独自撮り下ろし写真

ヒーローに憧れたことは「あんまりなくって」

 榎木が演じるシュウタは、24区内にあるパン屋「蒼生ベーカリー」の息子。筋トレが日課で、運動神経が抜群のシュウタは、かつては街を守るヒーロー“Mr.24”として活動していたが、過去の事故で幼なじみ・翠堂アスミを助けられなかったことを悔やみ、今はヒーロー活動を停止していた。しかし、死んだアスミからの着信をきっかけに、悩み葛藤しながらも、再び己の中に宿る「ヒーローとしての自分」を取り戻していく――。

――本作はゲーム業界で活躍してきた下倉バイオさんが、初めてアニメ脚本を担当した作品です。最初にシナリオを読んだときはどのような印象を持ちましたか?

榎木:未来を選択するというのが軸の物語で、しかもその選択がシビア。非常にテーマ性のある骨太なお話だと感じました。また、自分の行く道を「選択する」というテーマは、選択肢を選んで進んでいくゲームと通ずるところがあると思いました。

――ゲーム的な要素で言えば、映像面も少し特殊な作り方をしています。

榎木:あるキャラクターが会話しているところに、立ち絵でほかのキャラクターがカットインして出てくる、というような演出はゲームっぽさがありますし、全体的に空気感が独特な作品に仕上がっているんじゃないかな。

――そんな本作において、榎木さんは元ヒーローの蒼生シュウタを演じます。
現在第3話まで放送されていますが、シュウタはどのようなキャラクターだと感じていますか?


榎木:元々は熱血漢で真っすぐな青年でしたが、幼なじみが亡くなってしまったことで、自分の選択に自信を持てなくなってしまったところがあって…。とはいえ、正義感の強さは変わっていません。現時点ではまだ振り回されているだけの彼ですが、これからどうなっていくのか、幼なじみのランやコウキとの考え方・選択肢の選び方の違いなどを比較しながら見守っていただければと思います。

――シュウタは街を守るヒーローとして活動していましたが、榎木さん自身は、どのような存在がヒーローだと思いますか?

榎木:うーん…とにかく常に何かと戦っていますよね。地球のため、平和のため、誰かのため。自分が守りたい何かのために何かと戦っているのがヒーローな気がします。

――そんなヒーローに憧れたことは?

榎木:実はあんまりなくって。小さい頃は、スーパー戦隊や仮面ライダーなどを見ていたとは思います。ただ、そこまでのめり込んでいなかったから、あまり記憶に残っていないんですよね…。それよりも学校の友達と『おジャ魔女どれみ』の話をしていたことは覚えています(笑)。あとは、『ドラえもん』などを好んで見ていましたね!

――平和な物語のほうが好き?

榎木:好みとしてはそうかもしれないです。何かを守るよりも、ワクワクするような冒険が待っている作品のほうが好きでしたね。


声で“なりきる”のはやめた 声優としてのこだわり

――榎木さんはあえて明確に役作りをせず、自然体でアフレコに臨んでいるとお聞きしました。本作でもそのスタンスは同様とのことですが、「自然体で演じる」とは、具体的にどのような感覚なのでしょうか?

榎木:声優って声を「作る」というイメージがあると思うんですけど、声を作って演じると、芝居とは別に「作った声を維持する」ということも意識しなければいけなくなります。そうなると、僕の場合は少しわざとらしくなってしまうように感じて。だったら、最初から無理せず、楽に出せる地声を軸に、勝手に変わるくらいの高い/低い声を出すことが、作っていないお芝居につながると考えました。それが、自然体で演じることだと捉えています。

――そのスタンスは声優を始めた頃から変わっていない?

榎木:最初は声を作っていた気がします。ただ、しっくりこなかったので、途中から声で「何かになりきろう」とすることをやめました。それが自分には合っていましたね。

――とはいえ、キャラクターを演じる以上、自分とは違う誰かを表現することになります。

榎木:難しいですよね。僕とは置かれている状況は違いますし、言葉遣いが違うキャラクターもいますし。

――そんな中でもキャラクターと共感しながら、自然体で演じるようにしているのでしょうか?

榎木:「共感」というよりも、僕はそのキャラクターが「自分」だと思って演じています。
比較対象がいて初めて成立する「共感」とはちょっと違いますね。そういう意味では、自分がこういう状況だったら何を選択するのか、といった自身の考えが出てしまうときがあっても、僕は別にいいんじゃないかと思っています。「キャラクターならこう考えるかな」と意識すればするほど、自然体で演じることもできないと思うので。

――シビアな展開が続く本作。物語が進むにつれて精神的に消耗するお話もあったかと思います。榎木さんは切り替えをうまくしているということでしたが、それでも気分がめいってしまったときは、どのようにリフレッシュしていますか?

榎木:歩くことですね。ストレス解消になりますし、自然と考えがまとまるんですよ。落ち込んでしまったときも、歩いて帰る道中でほぼ回復、寝たらもう完全回復しています。割とメンタルは強いほうだと思いますね。

――最後に作品を楽しみにしているファンに向けて、今後の見どころなどを紹介していただければと思います。

榎木:より明確に対峙(たいじ)する相手が登場します。それに3人がどう立ち向かっていくのか、3人が何を選択するのか見守っていただければと思います。
また、事件で命を落とした翠堂アスミの存在など、謎がどんどん明らかになっていくので、その点も楽しみにしていてください。(取材・文:M.TOKU 写真:松林満美)

 『東京24区』はTOKYO MXほかにて毎週水曜24時30分から放送。

スタイリスト:高橋結 衣装:wizzard、tabito

編集部おすすめ