北朝鮮の金正恩総書記が、首都・平壌に比べて遅れている地方の経済を発展させるために取り組んでいる「地方工業発展20×10政策」について、国営メディアはその成果を強調しているが、既に失敗が予見されているも同然だ。

計画は、地方工業の発展よりも、計画経済への回帰を目論んだものと見られているが、数十年培われた伝統の業を一朝一夕に真似できるものではない。

昨年建設された20の市・郡の地方工業工場のうち、一部では原材料や熟練工の不足により、生産が正常化できていない状況だ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

北朝鮮は今年2月11日、両江道(リャンガンド)の金亨稷(キム・ヒョンジク)郡で地方工場の竣工式を実施した。これにより、一次指定された20の市・郡における地方工業工場はすべて完成したことになる。現在は、二次指定の別の20の市・郡で新たな地方工場の建設が進められている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の行政幹部は、「漁郎(オラン)と鏡城(キョンソン)に建てられた地方工場では生産の正常化に苦戦している」と述べた。その理由に付いてっ子の幹部は、「原材料の不足にある」と語った。

竣工式では様々な製品を披露した両工場だが、「試作品のように種類が多く、品質もそこそこいい製品が次々と生産されることは期待していなかったが、それでも住民の反応は肯定的だった。だが現実はまるで異なる」と述べた。

鏡城食品工場の竣工式では、地域特産のクコの実を使ったゼリーや菓子、酒、コチュジャンなどが展示され、一部は試食も可能だった。しかし現在はクコの実が不足しており、それらの製品は生産できていない状況だ。

情報筋は「鏡城のクコの実は薬効が高いことで知られているが、生産量が少ない」としたうえで、「昨年から原料基地事業所がクコの実の栽培に力を入れているが、食品工場に安定供給できるまでにはあと1~2年はかかる」と述べた。

漁郎に建設された水産加工工場でも、竣工式の際に当局が提供したスケトウダラ、タラ、タコ、カニなどを使った加工品の試作品を披露したが、現時点では水産物の安定供給がされていないとのことだ。

「必要な水産物は郡内の水産協同組合が供給することになっているが、最近は漁獲量が少ないためか、魚が入荷するのはたまにで、しかも量が少なく、すべて冷凍保存されており、重要な行事のときに製品として加工される予定だ」と述べた。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の別の情報筋は、「全国の地方工業工場の中で正常に稼働している工場はほとんどない」とし、「咸州(ハムジュ)と金野(クミャ)に建設された工場も技術と技能工の不足で苦しんでいる」と述べた。

咸州食品工場は、試作品の段階から製品の質が低かったという。そこで工場の幹部は、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころから自宅で菓子の製造、販売を行っている女性を訪ね、そのノウハウを学んだそうだ。

しかし、彼女の職人技をうまく習得できなかったのか、彼女のように美味しい菓子を安定して作ることには失敗した。結局、朝鮮労働党咸州郡委員会が介入し、その女性を菓子製造班に強制的に配属したという。

情報筋はさらに、「最近、平壌で開かれた地方工業工場製品の品評会に出品された酒も、実は工場で製造されたものではない」と語った。「数十リットル程度の酒を製造するために工場設備を動かすのは非効率と判断され、個人に特別に頼んで酒を作ってもらい、それを工場のラベルを貼った瓶に詰めて出品した」と明かした。

情報筋は「20の市・郡に立派な新工場が建てられたが、状況はどこも似たり寄ったり」で、「生産に必要な原料の安定供給が重要であるのはもちろんだが、設備や技術、技工の水準が不足しているため、個人が作る製品よりも品質が劣るという点も問題だ」と指摘した。

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