北朝鮮東海岸に位置する咸鏡北道(ハムギョンブクト)の花台(ファデ)郡の沖合で、今年4月に1隻の小型木造船が北朝鮮当局に拿捕された。

乗っていた4人は生活苦から脱北することを綿密に計画し、実行に移したが、計画を事前に察知していた当局が、警備艇を動員して海上で彼らを逮捕したのだ。

そして、その全員が管理所(政治犯収容所)送りになったと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

情報筋によると、4人は逮捕され咸鏡北道保衛局(秘密警察)で取り調べを受けた後、平壌の国家保衛省に身柄を移送された。そして、今月中旬に管理所行きの最終決定を受けた。

4人のうち3人は家族で、残り1人は水産事業所に籍を置く船長だったという。彼らは道保衛局でそれぞれ別々に尋問を受け、全員が「韓国に行こうとした」と自白したと伝えられている。脱北に失敗して捕まった場合、目的地が韓国だったとなればいっそう悲惨な結果が待っている。にもかかわらず自白したということは、全員が凄惨な拷問を受けたことを示唆している。

道保衛局は、「党と国家を裏切って、我々の敵である韓国に行こうとしたのは、人間としての生き方を放棄したも同然で、人間扱いするに値しない」として、取り調べ中は食事すらまともに与えなかったという。

国家保衛省に身柄を移された4人は、「事件を迅速に処理せよ」との中央からの指示に基づき、速やかに政治犯収容所への収監の決定が下された。

詳細な行き先は明らかになっていないが、韓国行きを企てたことを考えると、よほどの強力なコネがない限り、生涯釈放が許されない「完全統制区域」に入れられたものと思われる。そこで生存し続けるのは極めて困難とされる。

劣悪な衛生、栄養状態、日常的な暴行、恣意的な処刑などがはびこり、天寿をまっとうすることはまず不可能だ。

一家はすでに全滅したも同然の境遇にある。

異例の速さで結論が下されたことは、住民の間でも噂となり、地域社会には不穏な空気が漂っていると情報筋は語る。

情報筋によると、逮捕された4人の居住区域を担当する保衛員の一人は「最近は韓国行きを企てて捕まると、1カ月も取り調べずにすぐ隔離区域送りにする。取り調べが長引くと韓国行きの噂が広まり、住民に(脱北できるとの期待を抱かせる)余地を与えるからだ」と一部の住民に話したという。

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