最近、北朝鮮にロシア産の小麦が大量に輸入されている。おそらく北朝鮮のロシア派兵への見返りだろう。
「兵士の犠牲と引き換えに得た小麦粉」だ。しかし、北朝鮮の消費者からの評判は非常に悪い。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、最近に入ってロシア産の小麦が大量に入荷するようになり、糧穀販売所(国営米屋)や路地裏の露天商の販売価格が下落していると伝えた。
現地ではコメ1キロが1万5000北朝鮮ウォン(約94円)で取引されているが、これまで小麦粉はコメより2000北朝鮮ウォン(約13円)ほど高かった。それが今では1万1000北朝鮮ウォン(約69円)でコメより安くなり、1キロ8000北朝鮮ウォン(約50円)のトウモロコシと大差なくなっている。
この小麦粉は、菓子やパン、麺、餃子、クァベギ(ねじりドーナツ)などの製造に使われているが、情報筋は「このロシア産小麦粉の品質が悪いという不満が出ている」と伝えた。
具体的には、「とうもろこし粉のように粘り気がなく、品質が低いために、一般の人々の間で不満が広がっている」とのことだ。
コロナ禍からの慢性的な食糧不足が続く北朝鮮だが、市場経済化が進展していた2010年代に「量より質」を重視する傾向が広がったせいだろうか、「とにかく腹を満たせればよい」のではなく、美味しくなければ消費者は満足しない。
金正恩総書記の名前で下賜されたお菓子セットを受け取った子どもたちが、味に不満を持ち、お菓子をぶつけ合ってふざける子どもまでいたという。この出来事は、体制の象徴ともいえる贈り物が拒絶されたという点で、政治的に大きな問題となった。
情報筋は、「ロシア産小麦粉への批判的な世論が広がる背景には、われわれ(北朝鮮)がロシアに武器と兵士を送ったという事実がある」と述べ、「当局は小麦粉の大規模な流入の背景について何の説明もしていないが、人民軍(北朝鮮軍)の派兵のニュースの後にロシア産小麦粉が入ってきたことで、住民たちはその『見返り』だと見ている」と語った。
しかし、兵士の犠牲を代償に得た小麦粉であっても、消費者の評価は厳しい。
情報筋は、「最近流通しているロシア産小麦粉は、何年も保管されていたのではないかと思うほど粘り気がまったくない」「見た目は普通の小麦粉のように見えても、こねるとすぐにボロボロになってしまい、料理を作るのは難しい」と説明した。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋も、ロシア産の小麦粉は質が悪く、価格も安いと伝えた。そして、国に対する批判が高まっている。
住民は、「『われわれの大事な息子たちをロシアの戦場に送り出しておいて、結局こんな小麦粉しか受け取れないのか』と怒りを爆発させている」と伝えた。