北朝鮮北部は、昨年7月末の大水害で深刻な被害を受けた。金正恩総書記は翌月10日の演説で、「いったん、新しい住宅を建てるからには二度と被害を受けないように、自然地理的に安全性が徹底的に保障された所、または災害防止対策を完全無欠に講じたことに基づいて50年、100年はびくともしない丈夫な住宅を打ち建てるべき」と述べた。
そして昨年12月21日には、平安北道(ピョンアンブクト)義州(ウィジュ)郡で行われた被災地の住宅竣工式で、130日あまりで「永久の保護障壁」、つまり防災住宅を完成させたと胸を張った。
そもそも、50年、100年もびくともしない住宅を、数万戸単位でわずか数カ月で建設するという計画自体に無理がある。案の定、50年どころか1年も経たないうちに、住宅に深刻な欠陥が発生していると両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
鴨緑江沿いにある金亨稷(キムヒョンジク)郡も、水害の深刻な被害を受けた地域の一つで、一帯には被災者向けの住宅が建設された。しかし、これらは欠陥住宅だった。
「煙が抜けないため、そのままでは死人が出る。住民たちは自費で金を出し合って業者を呼び、屋根をはがして煙突を修理するなど、問題がひとつやふたつではない」と、現地の情報筋は証言する。
実際、デイリーNKが入手した住宅の写真には、瓦屋根が落ちたり壊れたりしている様子が写っている。住民の一人が屋根に上って瓦を手直ししている姿も見える。写真の中の住宅の外壁には、水濡れによると思われるまだら模様が広がっていた。これは、金亨稷郡の被災地にわずか4カ月で建てられた住宅で、被災者はこんな欠陥住宅で冬を過ごしたのだ。
北朝鮮の住宅では、練炭や石炭、または薪を燃やして温めた空気を床の下に通して部屋全体を暖めるオンドルが使われているが、床の密閉、煙突の作りをしっかりとしたものにしなければ、一酸化炭素が室内に充満し、住民の命を脅かす。
さらに、外装は湿気に弱いためひび割れて、壁もセメントの強度が弱くて簡単に崩れてしまうとのことだ。また、窓ガラスは国産品が使われているが、極寒で割れてしまい、住民はビニールシートを貼り付けて寒さをしのいだという。
こうした状況に住民の間からは不満が噴出しており、「『藁ぶき屋根の家にも劣る』という声すら出ている」という。