最近、北朝鮮で「しゃべらない炊飯器」が人気を集めている。「ご飯が炊けました」という音声が耳障りだからではない。

美味しいご飯を炊くことすら、監視や取り締まりの対象となりかねないという、北朝鮮特有の事情が背景にある。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、富裕層の間で最近注目されているのは、音声機能を解除した「しゃべらない炊飯器」だという。外国に派遣された幹部が帰国時に使用していた家電を持ち帰ることが認められ、韓国製品の持ち込みが容易になっていることも人気の一因だ。

この「しゃべらない炊飯器」が求められる理由は、製品が韓国製であり、音声案内機能が当局にとって取り締まりの対象となるためだ。

北朝鮮当局は、反動思想文化排撃法、平壌文化語保護法、青年教養保障法などを次々と施行し、韓国の文化コンテンツやその影響を徹底的に排除しようとしている。当然、韓国製品の販売・所有・使用も厳しく禁止されている。

当局はしばしば、自宅への抜き打ち検査を行っている。韓国製品が見つかれば、重大な問題となる。それにもかかわらず、「一度でも韓国製炊飯器を使ったことがある人は、未練を断ち切れずに使い続けようとする」と情報筋は語る。

また、「一部の派遣幹部は帰国命令を受けると、まず現地の知人に韓国製の電気炊飯器を手に入れてくれと頼む。ただし、音声案内機能を解除した“しゃべらない炊飯器”であることが条件だ」とも話す。

ちなみに、以前はソウルのソフトな口調で「ご飯が炊けました」と知らせてくれる音声機能が人気だった。

情報筋によれば、「朝鮮労働党は韓国製品の使用を重大な政治的問題として扱うと明言しているが、それでも韓国製への未練を断ち切れない人は多い」という。さらに、「音声機能を解除するだけでなく、本体に印刷されたハングルの案内文もすべて消すようにしている」と明かした。

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