北朝鮮北東部の大都市、清津(チョンジン)市郊外の農村に暮らすある女性の“人生の大きな選択”が話題になっている。一生を農民として暮らすことを拒み、結婚を通じて新たな人生を切り開こうとしたのだ。
清津市郊外の青岩(チョンアム)区域の農村に住むまだ18歳の女性、Aさんは先月初め、20代後半の除隊軍人のBさんと結婚した。高級中学校(日本の高校に相当)を卒業したばかりの若い女性が、農村から抜け出すために10歳年上の男性と結婚したことに、多くの人が驚いていると、情報筋は伝えている。
Aさんは、決して貧しくない家の出だが、農民の家庭に生まれた者は、「出身成分」と呼ばれる北朝鮮の身分制度上、農場員として一生を送らねばならないとされている。
ただし、軍や突撃隊(半強制の建設ボランティア)への参加とその対価としての入党、進学、そして結婚といった手段を通じて、例外的に農村を離れることが可能な場合もある。
Aさんはどうしても農村から出たいと思い、仲人の紹介で、3月に兵役を満了して工場に配属された10歳年上のBさんと出会った。そして、急速に結婚に踏み切った。現在は、同じ青岩区域でも市街地にある夫の家で新婚生活を始めているという。
彼女のように、一部の女性は早期結婚を「脱農村」の手段として選んでいる。都市部に住む男性と結婚すれば、農作業と貧困から解放されて、商売をしながらインフラの整った都会で暮らすことができる。商才があれば、それなりの収入を得ることも可能だが、農村ではそのような機会自体が乏しい。
こうしたAさんの行動は、保守的な農村社会においては予想外のことであり、村人たちに少なからぬ衝撃を与えたという。
情報筋は「このような形での結婚がまったくないわけではないが、一般的とは言いがたい」と述べ、「しかも最近では『結婚=苦労の始まり』という認識が若者の間に広がっている状況下では、なおさら珍しいケースと見られている」と付け加えた。
最近の北朝鮮の若者の間では、「結婚はカボチャをかぶって豚小屋に入るようなものだ」といった言い回しまで出回るほど、非婚傾向が広がっている。
都市部を中心とした多くの北朝鮮の家庭では、妻が商売で得る現金収入が家計の柱となっている。夫は国営の工場、企業所、国家機関に勤めているが、ろくな給料は出ない。そのため、『結婚して夫を養うくらいなら一人で暮らす方がましだ』と考え、結婚を避ける若者もいる。また、結婚したとしてもかなり歳を取ってからで、子どもも産もうとしない。
そんな風潮に逆行し、早婚を選んだことで注目を集めたのだ。
こうした早婚に対する見方にも、都市部と農村の結婚観の違いが影響していると見られる。
情報筋は、「結婚すれば苦労する、という感覚は農村の女性にとっては贅沢に近い」と述べた。結婚しなければ農村から出ることは困難だからだ。
情報筋はまた、「最近の若者は商売でもしない限り生きていけないという現実を肌で感じており、むしろAさんのように早婚によって農村から脱出し、商売をして生活を切り開いた姿を羨ましがる雰囲気すらある」とも述べた。