北朝鮮は現在、「田植え戦闘」の真っ最中だ。農民のみならず、都市住民も農場に動員されて田植えを手伝わされる。

農業の機械化が遅れているうえ、一部で導入された機械も慢性的なディーゼル燃料の不足により使用できず、事実上はすべての作業を人力に頼らざるを得ない状況だ。

この期間、市民はやむを得ない事情で外出していても、それを証明できなければ当局により農場に連行される。そればかりか、労働鍛錬隊(短期の強制労働施設)に入れられる人も出る有り様だ。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、「先月11日から25日までの15日間にわたって農村総動員令が発令され、この期間中は午後2時以前に誰も通りに出てはならないという厳しい取り締まりが実施された」と述べた。

このような取り締まりは例年この時期に行われており、摘発されたとしても、近隣の農場に連行されて、3~4時間農作業をすれば解放されていた。しかし、今年からは労働鍛錬隊送りにすることにしたという。そこでは過酷な肉体労働が強いられ、衛生状態も劣悪なため、短期間の拘束であっても健康を損なうリスクがあるとされている。

安州(アンジュ)市在住の30代のAさんは、親戚が脳出血で倒れたという知らせを聞いて家に向かう途中に取り締まりを受け、労働鍛錬隊に送られてしまったという。

また、咸鏡北道(ハムギョンブクト)在住の50代Bさんは、平安南道の親戚の家を訪れ、「他地域の人間だから大丈夫だろう」と思って外出したところ、摘発されて労働鍛錬隊に連行されてしまった。

幸いにしてBさんは、旅行証(国内用パスポート)を所持しており、宿泊登録(居住地以外に泊まる場合の登録)をきちんと行っていたため、2日後に無事釈放されたとのことだ。

だが、旅行証なしで平安南道を訪れていた人は、労働鍛錬隊に入れられて15日間も強制労働をさせられ、結局はワイロを渡してようやく釈放されたというのが、情報筋の話だ。

情報筋は、「個人的な事情で他地域に来ていたにもかかわらず、運悪く取り締まりに遭って労働鍛錬隊で過ごすはめになり、さらにお金まで失うという二重の苦難を強いられた人も少なくなかった」と述べ、「毎年この農村総動員の時期になると、すべての住民が生活そっちのけで農作業に行かなければならない現実が苦しい」と吐露した。

通常の職務を一時的に中断し、全国的に農作業に従事させられることは非効率だとの批判もある。

情報筋は、「農村総動員期間になると皆が一斉に動員されるが、これでは疲労が蓄積して作業が雑になり、生産性も下がる」とし、「むしろ人員を二つの班に分けて7~8日交代で働かせた方が効率的で、疲労も軽減されるだろうという声もある」と述べた。

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