尹錫悦前大統領が昨年12月に弾劾罷免され、空席となっていた大統領の座をめぐり、3日に実施された韓国大統領選挙で李在明氏が勝利し、翌4日に正式に就任した。

韓国の世論調査機関のリアルメーターが、4~5日に18歳以上の韓国国民1012人を対象に世論調査を行なった結果、李在明新大統領の支持率は58.2%を記録した。

同社は、「歴代大統領と比べて若干低い」と評した。大統領当選直後の世論調査で、李明博氏の支持率は79.3%、文在寅氏74.8%、朴槿恵氏64.4%、尹錫悦52.7%だった。

北朝鮮国民の間でも、韓国の新政権への反応が広がっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)では否定的な見方が報じられた一方、デイリーNKが取材した会寧など国境地帯では、より前向きな声が多く聞かれた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、中国との国境に接する会寧(フェリョン)の市民は、南北関係が改善するとの期待感を込めて肯定的に受け止めていると伝えた。

北朝鮮国営メディアの報道は、選挙結果と新大統領の就任を簡潔に伝えるのみで、具体的な論評や分析は避けられた。だが、中国キャリアの携帯電話を持ち、外国と直接やり取りができる人の多い会寧では、李在明氏の経歴や政策など、より具体的な情報が伝わっている。

市民の間では、「李大統領はわれわれ(北朝鮮)と良い関係を築こうとする人だそうだ」「われわれと対話しようという意志があるそうだ」といった声が広がっているという。

情報筋は「こちらの人々が韓国の大統領に関心を寄せるのは、南北関係が彼らの生活と直結しているからだ」と語り、強化された取り締まりを例に挙げた。

尹錫悦前大統領の在任期間中、南北間の緊張が高まるにつれ、北朝鮮国内では社会全体にわたる締め付けと取り締まりが大幅に強化された。特に、韓国と接触した人に対する監視と処罰は非常に厳しかったという。

中国や韓国に住む脱北者から、北朝鮮に住む人宛の送金を届ける送金ブローカーに対する取り締まり強化がその一例だろう。

こうした状況は、金正恩総書記が南北関係を「敵対的な二国家関係」と位置づけたこと以降、さらに深刻になった。

情報筋は、「韓国と携帯電話で通話した人がスパイ容疑で管理所(政治犯収容所)に入れられたり、韓国風の言葉遣いで話したり、韓国のドラマや映画を見たことが『非社会主義的行為』として、若者に対しても労働教化刑(懲役刑)が下された」と話した。

そうした背景の中で、南北関係の改善に意欲を見せる韓国の新大統領が当選したというニュースは、住民たちにこれまでになく歓迎されているという。情報筋は「少しでも息苦しさが和らぎ、締め付けや取り締まりが緩和されればいいと言う人が多い」と語った。

また、会寧から西に離れた、同じ国境地域である両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)の市民も、「李在明大統領が当選してよかった」「同じ民族同士、これ以上敵対したくない」といった肯定的な反応を示しているという。

これは、北朝鮮当局が掲げる反韓路線や、「民族」や「統一」といった概念を消し去ろうとする方針とは対照的に、国民の間では依然として「一つの民族」「統一」への意識と感情が残っていることを示している。

中でも、密輸に携わる人々の期待は大きい。

情報筋は「国境地帯は情勢の影響を強く受けるため、内陸部よりも敏感にならざるを得ず、国境を挟んで生計を立てている人々はなおさらだ」とし、「密輸で生計を立てている人たちは、『今回の大統領選では、われわれとうまく付き合える人物が当選したようだ』と静かに喜ぶ声も聞かれる」と伝えた。

編集部おすすめ