北朝鮮当局が幹部に対して、冠婚葬祭などを口実に行う宴会を禁止するとの指示を出した。同様の指示は初めてではなく、しばしば出されているが、一時的な効果にとどまっているとされる。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、朝鮮労働党咸鏡北道委員会(道党)が先月31日、道内の各機関や企業所の責任幹部を集めた会議の場で、宴会の禁止を厳命した。「緊張した社会状況にそぐわない」というのがその理由で、違反者には厳罰を下すとの警告があった。
この「社会状況」とは、次のようなものだ。
首都・平壌郊外の南浦(ナムポ)市の温泉(オンチョン)郡では今年1月、地方工業工場の竣工を祝った場で、参加した幹部らが、女性による浴場での性接待を含む不適切な行為に及んだとして、朝鮮労働党中央委員会第8期第30回書記局拡大会議で激しく批判された。
金正恩総書記が激怒したことが背景とされる。処分内容は知られていないが、厳罰に処されたと思われる。それ以降、幹部らの間では「命が惜しければおとなしくしておこう」という自制ムードが広がった。
実際、やはり同会議で党の規律に違反し農民に不利益を与えたと批判された地方幹部らは、金正恩氏から「地方の権力乱用者、官僚主義者」による「許しがたい特大型の犯罪事件」であると断罪され、10人余りが公開処刑されている。
さらに先月21日、清津(チョンジン)造船所で駆逐艦が進水式で横倒しになる事故がおきたが、その結果、温泉郡の件と同様の緊張感が再び漂っており、「幹部を対象とした集中的な学習や思想検閲(思想審査)が進められ、当局の指示に違反するのはもちろん、些細な発言や行動でも大きな問題にされる状況だ」と情報筋は伝えた。
さらに、田植え戦闘の真っ最中である上に、中央から幹部が現地入りしていることから、道党は、道内で幹部が宴会を開けば、問題視されるかもしれないと非常に警戒しているとのことだ。
情報筋は、「どれだけ忙しい田植え期であっても、冠婚葬祭や誕生日があれば、職場の同僚や友人たちが集まって酒や食事を共にするのが普通だった」と述べ、一般の労働者より幹部が多く開いていたが、今では誕生日も静かに過ごすことが多いという。