北朝鮮の国営メディアが、新型駆逐艦が横倒しになった進水失敗事故と関連し、責任を問われた幹部らの姿を映像から削除したことがわかった。
朝鮮中央テレビは13日に進水式を報じた際、3月に金正恩総書記が造船所を視察した映像を再放送した。
北朝鮮当局がこうした措置を取るのは、2013年に金正恩氏の叔父、張成沢(チャン・ソンテク)元朝鮮労働党行政部長が処刑されて以来のことだとされ、同氏の怒りの激しさを物語っている。
張成沢氏の処刑と彼に連なる人脈の大規模粛清は、金正恩政権が誕生して以来、最大級の「惨事」と言って過言ではない出来事だった。粛清された人の数は、1万人に上るとも言われる。
規模の大きさだけでなく、やり方の残忍さも際立っていた。
北朝鮮では金正恩氏の祖父・金日成主席の時代から公開処刑が行われていた。特に父・金正日総書記は大量餓死につながった食糧難「苦難の行軍」の時期、国民の目を自らの失政から逸らせるため、政治的な事件をでっち上げるなどして頻繁に公開処刑を繰り返したとされる。
しかし金正恩氏は、それを踏襲するにとどまらなかった。たとえば、張成沢氏に先行して処刑された彼の2人の側近、李龍河(リ・リョンハ)党行政部第1部長と張秀吉(チャン・スギル)同副部長のケースだ。
韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使の著書『3階書記室の暗号』や、国情院次長や大統領補佐官を歴任した羅鍾一(ラ・ジョンイル)氏の『張成沢の道』などの情報を総合すると、2人に対する衝撃的な公開処刑の様子は次のようなものだった。
処刑に用いられたのは、大口径の4銃身高射銃である。これで撃たれると、人体は原形をとどめず文字通り「ミンチ」となる。
従来、北朝鮮の公開銃殺にはカラシニコフAK47自動小銃が用いられてきた。それでも十分に残忍な殺し方が可能であるにもかかわらず、不必要に破壊力の大きな火器を用いるのは、まさに「金正恩式恐怖政治」の演出と言えた。
今回、映像削除が久しぶりに行われたことで、韓国メディアは「これまで北朝鮮は駆逐艦事故に関連して5人の幹部が拘束されたと公表しており、実際の粛清規模はさらに広範囲である可能性が高い」(ニュース1)などと分析している。