北朝鮮の金正恩総書記が進める「地方発展20×10政策」で、地方工場が相次いで竣工している。しかし、稼働は必ずしも順調とはいえず、目立った成果も乏しい。

そんな中、意外な「生活必需品」が住民の間で話題になっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋が明らかにした人気商品とは、なんとトイレットペーパーだ。「今年2月に竣工した粛川(スクチョン)郡の地方工業工場で作られたトイレットペーパーが、住民のあいだで『白い紙』として注目されている」と伝えた。

北朝鮮では多くの場合、トイレでは古本やノートを1枚ずつ破り、よく手でもんでから使っている。ちなみに、政治的に問題化する可能性があるので、古新聞はあまり使われない。

それがここへ来て、木くずや稲わらから作られたトイレットペーパーの登場が人々の注目を集めている。

情報筋は「木くずから作られた白くて丸いトイレットペーパーが『商品』として売られているのを(消費者は)不思議そうに見ている」とも付け加えた。

粛川郡地方工業工場で生産され、国営商店で販売されているこの商品の価格は、質に応じて1500北朝鮮ウォン(約8.5円)から3000北朝鮮ウォン(約17円)に設定されている。地元民にとっては高価であるため、「入院している家族や親しい人を見舞う際に、2~3個買って持っていく」と情報筋は説明した。

「白いトイレットペーパーは水に溶けやすい紙であり、病気もこの紙のように水に流れていくように早く治ってほしいという願いを込めて、見舞いの贈り物として持参するのだ」というのが情報筋の言葉だ。

さらに情報筋は、「病院で見舞いの品としてトイレットペーパーを受け取った患者は、トイレに行くときや病院の廊下を歩くときに、それを少しちぎって手に持って歩き、さりげなく誇らしげに見せる」と補足した。

平安北道(ピョンアンブクト)の別の情報筋も2日、「今年2月から稼働を始めた塩州(ヨムジュ)郡の地方工業工場で生産されたコチュジャンや清涼飲料水などが商店に流通し販売されている」と明かした。

「その中でも、稲わらから作られたトイレットペーパーが農民の間で『新たな文明』として話題になっている」とし、「彼らは『白いトイレットペーパーを本当にトイレで使ってもいいのか』という反応を示している」と付け加えた。

情報筋によると、「トイレットペーパー1個の価格はジャガイモ1キロとほぼ同じなので、農民たちはそれを買って日常使いすることができない。見舞いに行くときに限って買うのだ」と語った。

さらに、「トイレットペーパーは患者の病気が早く治るようにという願いが込められた『気持ちのこもった贈り物』という認識が広がり、見舞いの定番商品になっている」と説明した。

特に「白いトイレットペーパーは豊かさの象徴と受け止められており、新婚夫婦の家を訪れるときにも、トイレットペーパーを贈れば『裕福に暮らせるように』との願いが込められた贈り物として受け止められている」とも話した。

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