北朝鮮当局が、過去に反社会主義・非社会主義連合指揮部の取り締まり過程で発生した「不当かつ過酷な処罰事例を全面的に再調査せよ」との特別指示を出したという。
デイリーNKの北朝鮮内部消息筋は「朝鮮労働党中央委員会書記局は今月初め、2021年以降に反社会主義・非社会主義(以下、反社非社)連合指揮部が不当に処罰した事例について、全面再調査を命じる指示を出した」と述べ、「これを受けて、党組織指導部と国家保衛省の幹部らで構成された合同調査グループが7日に発足し、12日から主要都市を巡回しながら関連事例の調査を行っている」と伝えた。
消息筋によると、合同調査グループは2~3カ月にわたって平壌、南浦、平城、沙里院、海州、元山など全国主要都市を回り、特に「自首した者に対する過酷な処罰の有無」「10代の青少年や社会的弱者が不当に取り締まられた事例」の再検討に重点を置いて調査しているという。
たしかに、北朝鮮ではこの間、10代の少年少女らが韓流ドラマを隠れて流布させたなどとして、長期の懲役刑を宣告されるなどの事例が相次いでいた。
消息筋は「合同調査グループは、『不当に処罰された』と訴え、信訴や嘆願、再調査を求めた教化所(矯正施設)の収監者の家族と直接面談している」とし、「その過程を経て、再審が必要と判断される対象者を選定し、教化所に通知したうえで、『模範的な更生』の可能性を基準に再審手続きを取る方針を検討中だ」と語った。
この件に関連し、現場では「金正恩総書記が執権初期に語った『国に対し罪を犯した者でも0.1%の良心があれば信じてやるべきだ』という政治哲学が再び強調されている雰囲気」だという。
こうした措置は、「党創建80周年という大きな政治的記念日を前に、過去の司法の過ちを清算し、党と司法機関に対する国民の信頼を回復する狙い」があると消息筋は伝えた。
消息筋は「合同調査グループと面会した教化所の収監者家族は感極まり『党が私たちを受け入れてくれて感謝する』と泣き崩れる姿も見られた」とし、「党が法の執行者の過去の過ちを正す姿を示すことで、民心を取り込もうとしている」と述べた。
消息筋は「党が直接乗り出して不当を正す姿に、親たちは嘆きを吐露し、安堵の表情も見せている」とし、「実際の民心を細やかに観察しており、住民の反応は良好だ」と内部の雰囲気を伝えた。
親や家族らの心情は察するに余りあるが、すでに処刑されてしまった事例も相当数に上っていると見られる。
残酷で理不尽な裁きを下しておきながら突如、それを撤回し、民心を手玉に取るのは金正恩政権の「十八番」であることを忘れてはならない。