北朝鮮当局は最近、「資本主義に幻想を抱くな」という内容の思想教育を、昨年7月の大水害で被災した住民を対象に実施した。
両江道のデイリーNK内部情報筋は、「朝鮮労働党中央委員会の宣伝扇動部が、昨年水害の被害を受けた両江道、慈江道、平安北道の国境に面した都市で資本主義への幻想払拭に関する『対比教養講演』を行うよう指示を出し、恵山市では今月18日から20日まで、これに基づく3日間の集中講演が実施された」と伝えた。
「対比教養」とは、他国と比較して北朝鮮の制度や政策が優れていると強調する内容で、今回の対象となったのは韓国の住宅事情だ。
「資本主義の韓国では住宅価格が青天井のように上昇している」「資本主義の韓国では貸付規制で庶民が家を持てない」などと、韓国の不動産の状況を説明した。
そのうえで、「わが国(北朝鮮)では、多くの家が流されたが、党と政府が大きくて現代的な住宅を建ててくれた」「一銭も払わずに家がもらえる国はわが国だけだ」と、北朝鮮当局は自国の制度が優れているとするプロパガンダを展開。
それなのに、この地域の住民はカネに目がくらんで国の機密を外部に売り渡したり、密輸などの反社会主義・非社会主義的行為が絶えないと批判した。
中でも若者の間で「資本主義のほうが優れている」「自分たちは遅れている」「資本主義の国で暮らしたい」という考えは嘘や不純分子の虚偽宣伝に基づくものだと断定し、「目を覚ませ」と訴えた。
北朝鮮が水害被災者に住宅を無償で供給したのは事実だ。ただし、それらは北朝鮮流のやっつけ仕事「速度戦」によって建設されたもので、多くが欠陥住宅だった。
また、低所得国である北朝鮮よりも、先進国である韓国の生活水準が高いことは、若者のみならず多くの住民が認識している。不動産価格の高騰が韓国の社会問題になっているのは確かだが、それだけを切り取って「北朝鮮のほうが優れている」と主張するのは無理がある。
結局、3日間の講演も、住民の共感を得られず、形骸化する可能性が高い。