北朝鮮当局が、平壌市内のプールでの集中取り締まりに乗り出した。
現地のデイリーNK内部情報筋によると、「平壌市検察所は、紋繡プールなど平壌にあるすべてのプールの管理・運営問題をめぐって監査、取り締まりを一斉に行い、今月末まで続ける」という。
今回の取り締まりは、市内のプールにおける組織的なダフ屋、つまり入場チケットの転売行為の動きが察知されたことを受けて始まった。
検察所は、施設関係者はもちろん、行政機関の担当者も絡んでいると見て、市・区域人民委員会(市・区役所)の商業・財政部門の幹部や各施設の責任者を対象に調査を行っている。
また、プールの入口には私服の係員を潜伏させた。入場チケットを転売するプールの担当者とそれを大量に買い取るダフ屋の取り引きの現場を押さえるためだ。数人の逮捕に成功したという。
情報筋は、「検察所は現在、逮捕されたダフ屋に対して購入ルート、取引額、機関、施設との関係などを重点的に追及しており、ダフ屋に直接関与していなくても、黙認していた機関も幹部も処罰する計画だ」と語った。
今回の監査は、単なるダフ屋取り締まりにとどまらず、プール運営を巡る構造的な問題に起因する弊害の解消を意図したものだという。
通常のチケット売上だけでは赤字を避けられない施設側は、上からの計画(ノルマ)達成圧力に応じるため、裏ルートでチケットを高額でさばく。ダフ屋はそれを2~3倍の値で転売し、計画達成に貢献する一方で、最終的な負担は住民に押しつけられるという構図だ。
情報筋は、「こうした実態は平壌に限った話ではなく、国のノルマが課せられる場所ならどこでも見られる現象だ」と語る。住民の不満が高まる中、当局は定期的に取り締まりを行うことで“民心統制”を図っているに過ぎず、根本的な解決には至っていない。
今回の事件に関与した人民委員会の幹部や施設関係者らは、取り締まりが始まるや否や互いに責任を押し付け合っているという。