北朝鮮の金正恩総書記は、最近発生したイスラエルとイランの武力衝突について、「帝国主義勢力と主権擁護国家との典型的な衝突」であると規定したうえで、イランの対応を戦略的な手本と見なし、核戦力の実戦運用性と指揮体系の強化を直接指示したという。

デイリーNKの北朝鮮内部の高位消息筋によると、金正恩氏は18日から19日にかけて行われた党の高位幹部協議で、「イランが国際条約(NPT=核不拡散条約)を守っていたにもかかわらず先制攻撃を受けたという事実は、我が偉大なる首領様(祖父・金日成主席)と将軍様(父・金正日総書記)がNPTから脱退した決断がいかに賢明であったかを証明している」と述べたという。

また、「核を持つ国家だけが真の抑止力を持つ」とし、「我々も脅威を受ければ、地球上のどこであっても必ず核で報復する」との原則を改めて明言したという。

さらに、イスラエルの空爆に対し弾道ミサイルで反撃したイランに対しても、「感情的な報復ではなく、戦略的主導権を確保したもの」と評価し、今後、朝鮮半島で類似の状況が発生すれば、正当な自衛権として行動に出ると述べたと伝えられた。

これが事実であれば、北朝鮮は今回の中東情勢を通じて、体制維持戦略を強化しつつ、「核開発は正当な自衛権である」とする論理の正当化に力を入れているようだ。これは2022年9月に制定された「核武力政策」法令で強調された「核による報復」という方針を再確認するものであり、内部に対して核使用の可能性について改めて明確なメッセージを送ったと解釈されている。

消息筋によると、「我々も同様の状況に直面したときは、正当な軍事的対応をすべきという点をあらかじめ明言したもので、外部からの攻撃に対する自動報復だけでなく、先制攻撃の可能性も含んでいるため、内部では核の『保有』ではなく『使用』を意識しているのではないかという声も出ている」という。

特に金正恩氏は今回の中東での事態を機に、核施設の生存性と指揮体系の独立性確保を最重要課題として掲げたという。核戦力運用の前提条件ともいえる生存性と指揮体系の全面的な再整備を命じたということだ。

金正恩氏は、今回の事例が、核施設が最初に攻撃対象となる現実を如実に示したとして、核施設の地下化、分散化、複数防御網の構築など物理的な生存性確保措置を指示する一方、即時対応が可能な自動報復システムの構築を強調し、サイバー攻撃や電波妨害など外部の妨害にも耐えられるように指揮体系の独立性を確保するよう命じたと伝えられている。

編集部おすすめ