北朝鮮の国境警備隊司令部が最近、傘下の旅団に所属する軍医所長を対象に集中講演会を行った。そこで明らかになったのは、隊員の食事の恐るべき実態だった。

デイリーNKの軍内部の情報筋によると、国境警備隊司令部参謀部は今月5日、軍医所長に対して「7月の1カ月間、哨兵(見張りの兵士)に対する衛生教育を強化せよ」と指示を出したという。

ただし、手洗いやマスクの着用といった通常の衛生指導ではない。背景には、以下のような事件がある。

中国との国境を流れる鴨緑江沿い、慈江道の国境哨所で勤務していた20代の国境警備隊員が、野生のハリネズミを捕らえ、勤務終了後に飯盒で煮てこっそり食べたところ、激しい腹痛と高熱、嘔吐の症状が出て数日間治療を受けた。

この隊員は後に回虫に感染していたことが判明した。調理が不十分な野生動物を食べる実態を象徴する出来事だ。

国境警備隊司令部は、この件を隊員個人の問題ではなく、部隊全体の衛生管理の問題と捉え、講演会を実施した。

講演では、回虫予防と野生動物の摂取禁止を柱とする「7月の哨兵衛生規則」が通達された。政治部と連携し、講演や文書で衛生教育を強化。ハリネズミやトカゲなど野生動物には回虫感染のリスクがあり、繰り返し摂取して摘発されれば処罰されると強調された。

また、液体と錠剤の虫下し(駆虫薬)を2段階で投与するよう命じられた。服薬指導は軍医所が責任を持ち、大隊や中隊単位で行い、薬を渡す際にも衛生規則を再教育するよう指示された。

北朝鮮では、医薬品や食糧の不足だけでなく、上下水道や防災インフラの未整備も重なり、チフスやコレラなどの伝染病が多発している。

部隊内からは「根本的な解決にならない」との声が上がっている。

情報筋は、この地域の食糧事情について次のように語る。

「慈江道では密輸がブロックされていて、最近の部隊の食糧事情は本当にひどい」
「隊員たちは空腹のあまり、ハリネズミでもトカゲでも食べるのが当たり前になっている」
「煮て食べればまだマシで、生のままかじる隊員もいる」
「野生動物を食べても腹を壊さなければ問題ないという認識が広がっている」

一部の部隊では配給量が減り、野生のハリネズミが唯一の蛋白源になっているという。衛生指導や薬だけでは限界がある。

情報筋によれば、軍医たちも「回虫感染の多発は食糧不足が原因だ」と見ている。
「夏場は食中毒が多発する時期であり、回虫感染が重なれば患者が急増して戦闘力が著しく低下する。それを防ぐにはまず食糧問題を解決するしかない」という認識だ。

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