北朝鮮が2023年9月に進水させた初の弾道ミサイル搭載型潜水艦(SSB)「金君玉(キム・グノク)英雄号」が、2年近くが経過した現在も作戦運用に入っていないことが明らかになったと、米国の北朝鮮専門サイト「ビヨンド・パラレル(BEYOND PARALLEL)」が7月17日(現地時間)に伝えている。
同艦は、金正恩国務委員長が「先制または報復攻撃」に用いる重要な核戦力として位置付け、海軍近代化の象徴とみなしていたが、実戦投入が遅れたことで「現代的な海軍建設という野望が頓挫した可能性が高い」と指摘されている。
「ビヨンド・パラレル」によると、金軍玉英雄号はディーゼル電気推進方式の潜水艦で、2023年9月6日に進水後、咸鏡南道の新浦(シンポ)造船所のドライドックで約1年間、装備取り付け作業が続けられてきた。その後は同造船所内の「保安係留地点」と呼ばれるエリアに移され、現在もそこに係留されているという。
2024年5月30日に撮影された衛星画像には金軍玉英雄号の姿が捉えられたが、それ以外に今年はほとんど活動が確認されていない。過去2年間、長期間の出航や潜航の兆候も見られていないことから、作戦能力を持つ段階には至っていないと見られる。
ただし、同メディアは今後6~12カ月の間に弾道ミサイル発射能力の改修作業が行われ、試験的な運用が開始される可能性はあると分析している。特に潜航状態からの発射実験を北朝鮮が年内にも公開する可能性が取り沙汰されており、国際社会の注視を集めているという。
もっとも、旧ソ連で1950年代に開発されたロメオ型潜水艦を改造して作られたと見られるこの潜水艦は、まともに潜行できるかも怪しいと見る向きも多い。韓国の専門家の間からは、「潜行状態からの発射実験を無理やり行えば、そのまま沈んでしまう可能性もある」との声も聞こえる。
金正恩氏は進水式の場で金軍玉英雄号を「戦術核潜水艦」と称し、「三次元の海上戦闘を構成する重要要素」だと表現。「潜水艦は様々な核を搭載でき、敵対国に対していかなる海域からも先制または報復の攻撃が可能であるため、極めて脅威的な手段になる」と述べていた。
とはいえ、金正恩氏が目指す「遠洋作戦」の実現はおぼつかない。北朝鮮は最近、近代的な駆逐艦2隻を相次いで進水させたが、米海軍はもちろん、複数のイージス艦を導入するなどした韓国海軍に対抗し得る力を備えるには(順調に行っても)数十年を要するだろう。