北朝鮮の刑務所で、服役者の死亡が相次いでいるという。
平安南道の情報筋がデイリーNKに語ったところによると、价川教化所(刑務所)では、熱中症の症状を訴える服役者が増加しているが、適切な治療を受けられないまま放置され、死亡に至るケースが多発しているという。
国営・朝鮮中央テレビによれば、7月上旬の北朝鮮の平均気温は平年より3.6度高い25.8度を記録し、観測史上最高となった。价川では36.2度を記録し、北朝鮮全土が猛烈な暑さに見舞われた。
民間人の住宅でもめったに見られないエアコンが刑務所にあるはずもなく、多くの服役者がなすすべもなく命を落としている。そして問題はそれだけではない。
死亡者の多くは、栄養失調、急激な体重減少、脱水といった複数の要因が重なり、重度の不整脈を引き起こして死亡したとされている。
また、虫刺されの痕や暴行による化膿した傷が見つかった服役者もおり、刑務所内の劣悪な環境とずさんな管理体制が、想像をはるかに超える過酷さであることを物語っている。
北朝鮮の拘禁施設は、国際社会でも「常識的に考えて生存不可能な場所」として知られている。服役者たちは、極端に貧しい給食と不衛生な生活環境に置かれ、様々な病気にさらされながら、過酷な強制労働を強いられている。こうした環境下で、猛暑を耐え抜いて生き延びるのは、もはや奇跡に近い。
さらに深刻なのは、こうした状況が价川刑務所だけに限られていないという点だ。北朝鮮全土の刑務所や政治犯収容所でも同様の問題が発生しており、体調を崩しても正確な診断や治療、薬の投与を受けられることはほとんどない。病気であっても、例外なく他の服役者と同様に強制労働に従事させられる。
北朝鮮には「病気による保釈制度」(刑事訴訟法第185条)が存在するが、権力も金もない人々には適用されない。これは、国民の人権がいかに無惨に踏みにじられ、そして北朝鮮社会の苦痛がどこから派生しているかを如実に示している。
价川教化所は、国民が生存に必要な資源にアクセスできず、飢えと病に苦しみながら死んでいく北朝鮮社会の構造を凝縮した縮図のような存在だ。北朝鮮全体が、「鉄格子のない監獄」と呼ばれる現実が、そこにはある。