北朝鮮の金正恩総書記の妹である、金与正朝鮮労働党副部長は28日、談話を発表した。

その中で「どの提案にも関心はなく、韓国と対座する意志もない」と述べ、韓国との交渉に応じない姿勢を示した。

とはいえ、水面下では異なる動きもあるようだ。

韓国のサンド研究所が運営するサンドタイムズは、韓国政府の元高官の話として、韓国の宗教関係者が最近、中国の瀋陽で北朝鮮の関係者と接触したと報じた。その場で北朝鮮側は、「南側から真心ある提案があれば、我々が協議の場に出ない理由はない」と語ったという。

北朝鮮の言う「真心」の基準は、米韓合同軍事演習の縮小または中断にあると分析されている。この元高官は、「南北関係が良好だったころには演習を延期または縮小した例があり、その時には南北間の定例会談が活発に行われた」とし、「8~9月に予定されている米韓合同軍事演習は、北朝鮮が会談再開を判断する重要な指標になる」と述べた。

また、「李在明政権が、拡声器放送の中断や漂流した北朝鮮住民の送還といった軍事的緊張を和らげる措置が、北朝鮮の関心を引いているようだ」と指摘。「北側は『敵意を持つ政権ではないようだ』と判断し、慎重に対話再開の可能性を探っている雰囲気だ」と評価した。

さらに、北朝鮮は過去の非公式接触で「軍事演習がない期間には石油や物資、人員を民生部門に回せるが、演習が始まると軍事対応のために資源が浪費される」と懸念を示したという。特に、空母や戦略爆撃機といった米国の戦略資産が朝鮮半島に展開されることは、心理的圧迫になると語った。

元高官は続けて、「北朝鮮は現在、国家経済発展5カ年計画の最終年度(2025年末)を控えており、これを成果にして締めくくることが金正恩総書記の政治的正当性を強化する条件となる」とし、「下半期に軍事的緊張が高まれば5カ年計画に支障を来すため、北朝鮮内部でも緊張緩和を求める声が高まる可能性がある」との見方を示した。

そして、「北朝鮮は敵対的二国家関係を越え、『協力的二国家関係』に転換することで、人民経済の資源を浪費せず実利を得られると考えているようだ」と分析。「金英哲、李善権など南北関係の責任者が在外同胞に『長期的には統一を志向する』と反応したことも、上層部の戦略変化の兆しだ」と解釈した。

2018年の9・19南北軍事合意書の締結時に実務を統括していた、余奭周(ヨ・ソクジュ)前国防部政策室長が、李鍾奭国家情報院長の特別補佐官に任命される予定だという。これもまた、北朝鮮との関係改善を意識した人事と見られている。

さらに、千海成前統一部次官も国家情報院長の特別補佐官に任命され、李鍾奭院長が南北対話再開と関係回復に強い意欲を示していると評価されている。

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