北朝鮮の平安南道徳川(トクチョン)市にある複数の小学校で、7月27日の「戦勝節」(朝鮮戦争休戦協定締結日)を前に、児童たちが地元に駐屯する朝鮮人民軍の特殊部隊・第11軍団の兵士宛てに「祝賀便り」と題した手紙を書く行事が一斉に行われた。

地元当局の指示により、小学2年生から5年生(8~11歳)が対象とされ、内容には「自らも将来、自爆英雄になる」との文言を含めるよう強要されたという。

思想教育の一環とはいえ、幼い子どもに対するこのような表現の使用には、保護者や地域住民から不安や批判の声が上がっていると、デイリーNKの内部情報筋が伝えている。

地元関係者によれば、この手紙の内容には以下の要素を含めるよう義務付けられていた。

第一に、軍人に対する感謝と敬意の言葉、第二に「ロシア戦線で戦う第11軍団兵士を誇りに思う」との文言、そして第三に「自分も成長したら金正恩元帥を守る自爆英雄になる」という決意の表明である。これらの内容は市当局から各校に配布された手本に基づいており、児童たちは個人の自由な発想ではなく、あらかじめ決められた枠組みの中で文章を書くことを求められた。

実際に書かれた手紙は各学校および市党委員会の審査を経て、戦勝節当日、第11軍団政治部に物資と共に届けられたという。このような「祝賀便り」行事は、単なる文芸活動の域を超え、政治的・軍事的メッセージの伝達手段として子どもたちが利用されている実態を露呈している。

さらに、同時期に行われた小学校児童の祝賀公演では、「自爆英雄となり血統を死守する」といった過激なスローガンが繰り返されたとの報告もある。このような教育内容に対し、保護者からは「幼い子どもに『自爆』という言葉を使わせること自体が異常だ」「無邪気な年齢のうちから死を美化する思想に触れさせることに強い抵抗を感じる」など、懸念の声が出ている。

しかし北朝鮮当局は、これを「10代からの忠誠教育」として正当化しており、「幼い頃から祖国防衛と最高指導者への献身を教えることが党の指導に従う道である」として思想教育を強化する構えだ。地域社会では、軍需工場への配給優遇などと同様に、軍との連携や協調が強調される傾向が加速している。

今回の「祝賀便り」行事は、北朝鮮がいかに若年層にまで徹底した忠誠心と自己犠牲の精神を植え付けようとしているかを象徴している。同時に、こうした政治的行事を通じて、戦争参加や対外的な軍事行動を正当化する国家の姿勢が透けて見える。

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