韓国デイリーNK傘下のANDセンターは先月、「中国の水産工場に派遣された北朝鮮労働者が、賃金の80~90%を北朝鮮当局に強制上納させられ、生活費として10~20%のみを受け取っていた」とする報告書を発表した。事実上の強制労働下で生産された水産物が、日本や米国、カナダ、スペインのほか、韓国国内でも流通していると指摘されている。

報告書によれば、大部分が女性である北朝鮮労働者は出国前に幹部に賄賂を支払う必要があり、特に女性には「生活評価書」の発給と引き換えに性的な圧力もあったという。これらは自発的な契約ではなく「構造的な搾取」であり、国際労働機関(ILO)が定義する強制労働の要件を満たすと断定されている。

到着後には、労働者のパスポートは管理者に没収され、宿舎では24時間の交替監視と外出の厳格な制限。日々12~14時間の長時間労働、暴言、脱走未遂に対する厳罰などが横行しており、実質的に労働を拒否する自由は排除されているとされた。

報告によると、支払われるべき賃金は労働者個人ではなく、北朝鮮当局の指定する銀行口座へ中国企業から入金される。その後、管理された口座から10~20%が本人に生活費として支給され、残りは丸ごと回収されていた。ある北朝鮮関係者は「多くは国家の水産相に送金される」と証言している。

さらに報告書は、こうした労働者による加工品が、中国産として韓国国内36社を通じて輸入され、大型スーパーや水産市場で販売されていると明らかにした。日本、米国、カナダ、スペインの市場にも同様のルートで供給されており、消費者の知らぬうちに構造的な人権侵害に加担している可能性を指摘している。

ANDセンターのファン・ヒョヌク研究員は、「北朝鮮の派遣労働者の強制労働は、国際法と国連制裁が無視されたまま続いている。これは人権問題にとどまらず、私たちの日常生活にも直結する深刻な課題だ」と語った。彼は、国際社会による制裁の厳格な実施、企業のサプライチェーン内での人権デューデリジェンスの義務化、市民による倫理的消費運動の必要性を強調した。

この報告は、北朝鮮の外貨獲得構造と国際供給網の弱点を照らし出すものであり、韓国や欧米市場におけるサプライチェーン透明性への警鐘とも受け止められる。国際社会および企業各位が直ちに対応を検討すべき課題として浮上している。

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