金正恩は元気か─韓国の大手紙「朝鮮日報」によると、トランプ米大統領は7月末、米韓が関税交渉で妥結する直前に面会した際、韓国側に問いかけたという。韓国の外交筋が6日、同紙に明らかにした。
韓国交渉団は事前に、米側の追加要求や強硬姿勢を警戒していたが、金正恩総書記の近況を問われたことで当惑したという。それもそうだろう。トランプ発言の直前である28日、金正恩氏のスポークスマンといえる金与正氏は、李政権が就任早々に対北放送を中止したことについて「やらなくていいことをやめただけ」と揶揄し、「保守であれ進歩であれ吸収統一を目論んでいることに変わりない」と、大韓民国への拒否感を示した。
金与正氏は翌29日にも(談話の日付は同日)、米国に対する談話を発表し、非核化協議については断固拒否。一方で、トランプ氏と金正恩氏の「個人的関係が悪くない」と述べるなど、首脳会談実現への含みを残した。二日連続の談話の裏には、米朝対話において韓国の仲介は一切不要だというメッセージも込められている。
こうした中で出てきたトランプ氏の「金正恩は元気か」発言は、韓国交渉団にとって、同盟国首脳が自国より北朝鮮指導者を優先して話題にしたという屈辱的な場面だ。トランプ氏は常々「金正恩氏との良好な関係」を誇示し、さらには北朝鮮を「ニュークリア・パワー」と呼ぶなど、事実上その核保有を肯定するかのような言葉まで口にしてきた。そして金正恩氏も、金与正氏も、核放棄を前提とした米朝首脳会談はあり得ないと繰り返し主張している。
関税交渉という国家利益を賭けた場で、同盟国より金正恩氏の近況を伺うトランプ氏の発言は、「米・朝・韓」の序列を露骨に示したといえる。対北放送の中断や米韓合同軍事演習の一部延期程度で北朝鮮を対話に導けると思っているのなら、韓国は米朝の狭間で右往左往するだけの「使い走り」の座に甘んじるしかない。