北朝鮮で小学校1年生から英語教育が始まっているが、現場では「実用性のない負担」だとの批判が広がっている。平安北道のデイリーNK内部情報筋によれば、定州市教育部は7月末、2学期から1年生の英語授業を遊び型に切り替えるよう各校に通達した。
北朝鮮は2018年、英語教育の開始学年を従来の3年生から1年生に繰り下げた。金正恩政権が掲げる「早期人材育成」のスローガンに沿った政策だが、保護者の間では「7歳の子どもにハングルも不十分なままアルファベットや発音を詰め込むのは無理だ」との声が相次ぐ。現場では、子どもたちがハングルを書き間違えながらも英語のスペル練習を強いられる光景が見られるという。
さらに深刻なのは、英語を学んでも使う機会がほとんど存在しない点だ。情報筋によると、「英語は大学進学や海外留学の機会が与えられる一部の上層階級を除けば、日常生活で役立つ場面は皆無に近い」という。
北朝鮮の一般国民が、海外旅行に行く機会はほとんどない。国境沿いに住む人々が川向こうの中国に行く機会も稀なのに、英語圏の国を旅行するなど夢のまた夢だ。
また、英語圏の人々が北朝鮮を訪れることも珍しいが、仮にどこかで出会う機会があっても、海外とはメールもSNSもできないから親交を維持するのは不可能に近い。
一般住民の間では「英語を学んでも一生使うことはない」との諦めが広まり、教育現場との乖離が鮮明になっている。
教育の質の低さも批判を招いている。教師の発音が統一されておらず、「father」を「パダー」と教える学校もあれば「パダル」と教える学校もある。
結局、北朝鮮の初等英語教育は「国家の掛け声」に合わせた形式主義的な政策だと受け止められている。保護者の不満は収まらず、子どもたちは使う見込みのない言語を早期から学ばされる状況が続いている。韓国で英語教育が小学校3年生から始まるのと比較すると、北朝鮮の方が導入時期は早いが、教育内容の質・実効性・社会的必要性の面では大きな隔たりが浮き彫りになっている。