北朝鮮の金正恩総書記の実の妹・金与正氏による李在明政権非難がエスカレートしている。金与正氏は19日、「朝鮮民主主義人民共和国外務省の主要局長との協議会で、韓国政府の欺瞞的な『宥和攻勢』の本質と二重の性格を辛辣に批判し、国家元首の対外政策構想を伝達して手配した」と、北朝鮮国営の朝鮮中央通信が伝えた。

金与正氏が李在明政権を非難する談話は7月28日、8月14日に続き3回目である。今回は談話という形式ではなく、国家元首、すなわち金正恩氏の対外政策構想として発信されたものであり、金与正氏のみならず最高指導者・金正恩氏の意志も示す狙いがあるようだ。その上で非難の度合いは回を重ねるごとにエスカレートしている。

談話のポイントとしては、まず韓国の「宥和攻勢」は欺瞞であり、本質は対決政策であると主張した。韓国は北朝鮮の体制尊重や平和を装いながら、実際には米韓軍事演習や新作戦計画5022を進めて北朝鮮の安全を脅かしている。これは表裏のある二重性であり、平和を語りながら対決を追求する欺瞞的行為だと非難した。

金与正氏は、「『希望』や「構想」を言いふらすのが風土病ではないか」「韓国人の怪異な属性と彼らが追求する腹黒い下心」などと、ヘイト・スピーチさながらの批判を展開しながら、文在寅から李在明へと政権が代わっても韓国の対北政策は本質的に変わっておらず、保守でも民主でも北朝鮮に対する敵対的野望は受け継がれているため、李在明もその流れを変えることはできないと断じた。

さらに韓国は米国の「特等忠犬」として従属し続けており、北朝鮮にとって信頼できる交渉相手ではない。むしろ地域外交の舞台では雑役すら担えない存在であり、北朝鮮は韓国を除外した外交戦略を模索すべきだと主張した。

筆者は、金与正氏の談話に振り回される李在明政権に対して「韓国は米朝の狭間で右往左往するだけの『使い走り』の座に甘んじるしかない」と記したことあるが、金与正氏は「雑役さえ与えられない」と、さらに辛辣な言葉を李政権に投げかけた。また、精神疾患を揶揄するような表現で韓国を罵倒するなど、韓国に対する憎悪が込められた談話となっている。

李在明政権が北朝鮮を刺激しない姿勢を貫く限り、金正恩・与正兄妹の韓国に対する見方は変化しないだろう。その間に金正恩氏は北朝鮮だけによる「王朝体制固め」を着々と進めていく。気づいたときには与正氏のいうところの朝韓関係、すなわち南北分断体制が完全に固定することになりかねない。

解放80年を迎えた今、朝鮮半島が永久分断の岐路に立っていることを、韓国はどれほど自覚しているのだろうか。

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