北朝鮮内閣が、全国の主要国道を中心に道路舗装工事を今年10月初めまでに可能な限り完了するよう各道に厳命していたことが分かった。デイリーNKによれば、この指示は先月下旬、内閣が各道の人民委員長を平壌に集めた会議で伝えられ、各部門の局長が毎日進捗を報告し、人民委員長自身が現場点検を担う体制が敷かれたという。

背景には、金正恩総書記が地方視察中に国道の劣悪な状況を直接目にし、強く批判したことがあるという。乗り物好きの金正恩氏は、若い頃は「走り屋」だったとも言われており、自ら車を運転した経験から出た批判かもしれない。

金正恩氏の指示を受け、朴泰成(パク・テソン)内閣総理らが5~6月にかけて全国の国道を車で巡視。道路が基本的な整備さえされていない現状に総理も激怒し、早急な改善を命じたとされる。

特に総理は、山肌に沿って蛇行する非効率な道路を改修し、山腹にトンネルを掘って直線化する「近代的道路改造案」を提示。内部をセメントで仕上げる方式を採用し、単なる舗装を超えた交通インフラ改革を進めるよう指示した。これには物流・輸送効率を高める政策的意図が込められているとみられる。

今回の集中対象地域は、平安北道・黄海南道・黄海北道・咸鏡南道・咸鏡北道の5地域で、年内に舗装率と計画達成度を内閣に報告することが義務づけられた。さらに平壌市・南浦市・江原道には、高速道路を含む主要道路の再整備計画を策定し、内閣の承認を得るよう求めた。

内閣総理はこの事業についてすでに党に報告しており、単なる行政措置ではなく「党の委任による国家的課題」であることを強調。金正恩氏の叱責に加え、外国人観光客が訪朝した際に劣悪な道路事情が「国家の体面を損なう」との懸念も背景にあるという。

一方で、各道の現場からは懸念の声も相次ぐ。

現在は高温多湿で降雨の多い夏季であり、舗装工事の品質を左右する「養生期間」が確保しにくく、施工不良のリスクが高まるという。ある住民は「もし本気でやるなら春に計画を立てるべきだった。夏に突貫で舗装せよというのは無理がある」と不満を吐露している。

北朝鮮当局は道路整備を「国家威信の象徴」と位置づけているが、現場の工法や気候条件を無視した性急な計画がかえって品質低下を招くとの指摘も強まっている。

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