金正恩総書記(国務委員長)が提唱し、北朝鮮当局が喧伝する「地方発展20×10政策」が、現場では期待された成果を上げられず停滞している。またしても虚飾に過ぎないことが露呈した。
朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、地方工業工場の建設を「人民生活を飛躍させる偉大な成果」と称賛し、金正恩総書記の業績として強調している。しかし実情は大きく乖離している。完成から半年も経たない金亨稷(キム・ヒョンジン)郡地方工業工場では、製品が「下着は雑巾にもならない」と酷評され、工場は稼働停止同然の状態に陥っていると、デイリーNK内部情報筋が伝える。
昨年完成した金亨稷郡の地方工業工場では、稼働から半年も経たないうちに深刻な問題が露呈した。供給された衣料品は品質が劣悪で、住民の間では「雑巾にもならない」と批判の声が相次いだ。石けんや歯磨き粉といった一部製品は出回ったものの、衣類に関しては「市場で購入する方が安心だ」とする風潮が強く、国産品はほとんど信用されていない。
さらに、生産の継続性にも疑問が残る。食料工場は月に数日しか稼働しておらず、製品の行方も不明確だ。結果として、住民生活の改善どころか、物資の横流しや腐敗の温床となっているとの見方が広がっている。
当局はこうした問題に対し、幹部の責任を追及する「検閲」を強化している。しかし、構造的な課題の解決にはつながらず、住民からは「また幹部だけが処罰される」と冷ややかな反応が目立つ。
一方、労働新聞は依然として「生産額が驚くべき成長を遂げた」「質の良い製品が供給されている」といった報道を繰り返している。
地方発展政策は、住民生活の向上を目的として打ち出されたはずだった。しかし、象徴的な工場建設に資源が投じられる一方で、生活改善はほとんど進んでいない。金正恩政権の“地方発展ショー”は、結局また人民を犠牲にした虚飾の祭典にすぎないのである。