北朝鮮・咸鏡北道の国境地域で、国家保衛省の保衛員が中国キャリアの携帯電話の使用者摘発を強化していることが、デイリーNKの複数の現地情報筋から明らかになった。特に来月予定されている第3四半期の「実績総和(業績評価会議)」を前に、摘発件数を増やすため、住民への圧力が高まっているという。

情報筋によれば、会寧(フェリョン)、茂山(ムサン)、温城(オンソン)などの国境地帯で保衛員が住民を訪ね、「中国の携帯を持っているなら自首せよ」と迫る事例が相次いでいる。北朝鮮当局は、密貿易や送金仲介に関わる住民が中国キャリアの携帯を利用して外部と連絡を取り合い、内部情報が漏洩することを重大な脅威とみなし、長年にわたり取り締まりを強化してきた。

その傾向は金正恩体制になって以降、とりわけ顕著になった。金正恩総書記は内部情報が流出し、それを材料に外国から批判されるのを何より嫌っている。

特に新型コロナ流行以降、違反者への処罰は一層厳格化され、摘発されれば教化刑を受ける例も多発している。こうした背景から利用者は以前より減ったものの、依然として中国キャリアの携帯は金儲けの有力な手段として残っており、密かに使い続ける住民は少なくない。

しかし、現行犯逮捕は容易でなく、保衛員の実績確保は難航している。このため一部は威圧的な言葉を使い恐怖を煽っている。会寧市では「われわれは一瞬も休まない」「油断すれば必ず捕まる」といった発言で住民を追い込んでいるが、自発的に出頭する者はほとんどいないという。

13日には会寧の送金ブローカーが担当保衛員から「中国の携帯を持っているのは分かっている。今が自首の好機だ」と迫られたが、否定を続けると「百倍後悔する日が来る」と脅されたとされる。それでも住民の間では「自首しても何の得にもならない」との認識が広がっており、摘発に協力する動きは極めて乏しい。

さらに皮肉なことに、保衛員自身も摘発対象となる住民からの賄賂収入に依存しており、利用者の減少は彼らの懐を直撃する。情報筋は「利用者が減れば賄賂の流れも細り、保衛員の収入が減少する。彼らにとっても板挟みの状況だ」と述べている。

編集部おすすめ