北朝鮮で違法な住宅売買が広がるなか、当局が取引を取り締まる内部指示を下したことが、複数のデイリーNK内部情報筋の証言で分かった。咸鏡北道人民委員会は今月初め、清津市を含む主要都市・郡の建設指揮部や人民委員会住宅管理部門に対し「住宅取引の秩序を安定させよ」との指示を通知したという。
情報筋によると、背景には国家が新築して住民に無償提供した近代的住宅を、入居から1年も経たずに住民が安値で転売し、古い家や辺鄙な地域に移り住む事例が相次いでいることがある。清津市のある戦争参加者(朝鮮戦争の退役軍人)一家が、こうした状況を憂慮して党組織に陳情を行い、中央が強い措置を指示したとされる。
そもそも北朝鮮においては、住宅の個人所有は許されておらず、したがって売買も違法だ。しかし現実には、その住宅に居住する権利の売買が、担当機関の黙認のもとに行われており、不動産への投資も根強く行われてきた。
国家が行う住宅建設も、対価として分譲権をもらうのを当て込んだ民間のトンジュ(金主)からの投資がなければうまく進まないほどだ。
しかし、最高指導者(金正恩総書記)からの配慮として与えられた新築住宅が当たり前に取引される状況は、金正恩氏と体制の権威を守る上で好ましくないと判断されたのだろう。中央の指示は「国家が供与した住宅を市場の売買対象にするのは社会主義原則に反する」と強調し、道当局に厳格な統制を命じたという。
さらに調査の過程で、住宅ブローカーが経済的困窮にある住民から安値で買い取り、簡単な改修を経て高値で転売する行為が横行している実態や、一部の「トンジュ(金主)」が家族名義を利用して複数の住宅を保有している事実も発覚した。これを受け、当局は「強力な制裁」に乗り出す構えを見せている。
人民委員会は今月末まで約1か月間、不法住宅取引に対する集中取り締まりを実施する予定で、とりわけ経済的に裕福な層が集中する清津市が重点対象とされ、数南(スナム)、新岩(シナム)、浦港(ポハン)地区が主要な監視地域に指定されたという。
摘発された場合、新築住宅の没収や住民の退去制限などの措置が検討されており、住宅価格の上限制導入の可能性も浮上している。
一方で住民の不満は高まっている。