北朝鮮当局が金正恩国務委員長の出席する観光地区イベントで、平壌の大学生を大規模に動員している実態が明らかになった。学生たちは「観光客」役を演じるやらせ要員として酷使され、炎天下や寒風の中で過酷な任務を強いられた結果、嘔吐や倒れ込み、風邪など深刻な後遺症に苦しんでいるという。韓国のシンクタンク「サンド研究所」傘下のメディア「サンドタイムズ」が伝えた。
消息筋によれば、今年6月に元山カルマ海岸観光地区で行われた開場式やロシア人観光客招待行事に多数の大学生が投入された。ラブロフ露外相の訪朝を取材したロシア記者も「観光客に偽装した出演者の多くが大学生だった」と証言している。
金正恩氏が関わるイベントでは「外見的な華やかさ」が求められるが、最も重要なのは最高指導者の機嫌を損なわない、すなわち金正恩氏の「激怒」を招かないことである。
観光地区では、スーツ姿の男女がビリヤード台に立ち尽くし観光客を装い、海辺では自転車に乗る者、バーテラスで酒を飲む者、ベンチで煙草を吸う者が配置された。いずれも金日成バッジを付け、流暢なロシア語を操る平壌外国語大学の学生たちである。ロシア記者は「最悪の芝居ではないが、観光地のにぎわいを演出するための“動員劇場”であることは明らかだった」と皮肉った。
この強制動員は一度きりではない。金正恩政権初期に開場した平壌文殊ウォーターパークのイベントでは、晩秋の冷たい気候にもかかわらず数百人の大学生が水着姿で水に入り続けた。その結果、体調を崩し風邪をひく者が相次いだ。見せかけの繁栄を演出するために、学生たちの健康は顧みられなかった。
さらに遊園地の開場イベントでは、学生たちが回転遊具に乗せられた。当初は3周の予定だったが、金正恩が現場を歩き回り関係者と会話を続ける間、彼らは降りることも許されず、12周を回り続けた。結果、ほとんどが嘔吐し、一部はその場で倒れ込んだという。まさに見世物としての酷使である。
消息筋は「大学生は主要行事のたびに俳優のように動員される。だが残るのは栄誉ではなく、苦痛と後遺症ばかりだ」と語る。華やかな宣伝映像の裏で、犠牲を強いられているのは無力な若者たちである。