金正恩国務委員長(朝鮮労働党総書記)の訪中に合わせ、北朝鮮の警察組織である社会安全省が各地の安全部に対し、武器・弾薬や爆発物の管理を徹底するよう指示を下したことが分かった。最高指導者の海外滞在中に「不測の事態」が発生することを防ぐ狙いとみられる。
咸鏡北道のデイリーNK内部情報筋は2日、「金委員長の中国訪問の報道が伝わった直後、社会安全省は各地の安全部に対し、武器・弾薬・爆発物を厳格に管理し、事故を一切起こさないよう指示した」と証言した。実際、咸鏡北道安全局は先月30日に非常会議を招集し、道内の市・郡安全部に方針を伝達。会寧市安全部はその日のうちに武器庫や弾薬庫の警備を強化したという。
安全部では出納簿や保管状況を点検し、武器庫の出入りは厳格に制限。許可なしの接近を禁止したほか、担当警備員には「小さな事故でも政治的責任を問う」と警告が出された。消息筋によれば、この「政治的責任」には連座制が含まれる可能性があり、緊張感が一気に高まっているという。
社会安全省による統制強化は、最高指導者の不在が「内部の不穏分子の活動機会」となることを防ぐ伝統的な措置とされる。北朝鮮は過去にも指導者の外遊時、公安機関を総動員して住民監視や事件事故の未然防止に努めてきた。今回も都市の要所に安全員を配置し、革命遺跡や銅像など重要施設への破壊工作や落書きなどを警戒しているという。
さらに、今回の訪中は事前に公表される異例の形式となったことから、従来以上に厳格な警戒体制が敷かれているとみられる。情報筋は「安全員が人民班(町内組織)の担当区だけでなく、市の別の安全部所属要員まで投入し、住民の言動を細かく監視している」と証言。「中国訪問に関する噂が広まらないよう、住民の会話まで情報網を通じて掌握しており、人々の間では『軽々しく話せない』と口を閉ざす空気が漂っている」と述べた。
労働新聞は2日、金委員長が習近平国家主席の招待を受け、抗日戦争勝利80周年記念式典に出席するため、前日1日に専用列車で平壌を出発し、2日未明に国境を通過したと報じた。