北朝鮮当局が韓国映像物など外部思想文化の流入を遮断するため、「反動思想文化排撃法」などを強化適用し、政治犯収容所の収監者数が増加していることが分かった。

北朝鮮内部の消息筋によると、国家保衛省(秘密警察)は6月末の全員会議で「2025年上半期の政治犯は約19万2000人に達した」と報告した。現在稼働中の収容所は6カ所で、▼第14号(价川)約3万9700人、▼第15号(耀徳)約3万3600人、▼第16号(化成)約2万1400人、▼第17号(价川)約3万9200人、▼第18号(北倉)約2万4200人、▼第25号(遂城)約3万1900人が収容されている。

前年同期比では全体で約2900人(1.5%)増加した。特に増加が目立つのは第16号と第18号で、第16号は国境密輸や軍事機密流出など「体制転覆」関連の罪で収監される者が多く、3100人(12.9%)増加した。第18号は「反動思想文化排撃法」違反者が多数摘発され、400人(1.7%)増加した。また、第14号では韓国映像物を集団で拡散した青年やその家族が一括して収監され、400人(1%)増えている。

こうした増加の背景には法制度の強化がある。2020年の「反動思想文化排撃法」、2021年の「青年教養保障法」、2023年の「平壌文化語保護法」など、外部文化を遮断する“三大悪法”が相次いで制定された。さらに2023年末、南北関係を「敵対的二国家関係」と規定したことで、韓流コンテンツに対する取り締まりは一層強化された。

今年2月18日には最高人民会議常任委員会の政令で刑事訴訟法が改定され、処罰対象と刑罰の範囲が大幅に拡大されたとされる。詳細は不明だが、韓国文化の視聴や流通はすべて「敵対行為」とみなされ、政治犯として厳罰に処される方針が徹底している。

一方、収容所の閉鎖例はなく、区域の再編や警備体制の調整を通じて運営が続けられている。特に第18号は拡張や管理主体の変更が繰り返され、現在は社会安全省が運営を担っている。また、閉鎖されたと伝えられた第17号も2014年に復活していたことが確認されている。

北朝鮮は「思想の純潔」を名目に統制を強化しているが、収監者の増加は抑圧の拡大を如実に物語る。韓流映像の視聴や流布が即「政治犯」とされる現状は、住民社会に恐怖を植え付け、閉塞感を深めている。金正恩政権が体制維持を最優先する姿勢は、収容所の膨張という形で明確に現れている。

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