北朝鮮で再び「コチェビ(浮浪児)」が急増している。市場や駅周辺をさまよい、物乞いや窃盗で生き延びる子どもたちの姿が目立ち、住民の間でも「以前より確実に増えた」との声が広がっている。
北部地域のデイリーNK内部情報筋によれば、1~2年前までは当局の取り締まりや一部支援策によってコッチェビの姿が減少していたが、現在は再び街頭にあふれ出している。住民たちは「人民が生きていけなくなった証拠」「社会が崩壊している兆候だ」と口をそろえているという。
急増の要因は食糧危機にある。ここ数カ月、市場の穀物価格は急激に跳ね上がり、日雇いや小商いで辛うじて生活していた人々が耐えられなくなっている。特に農村部ではコメやトウモロコシが手に入らず、ジャガイモ数個で一日をしのぐ家庭が増加しているとされる。
消息筋によると、保護者を失った子どもや、親が食糧を求め遠方へ出かけたまま生活を維持できなくなった子どもが、飢えをしのぐために市場や駅に出て物乞いを始めているという。コッチェビは住民の荷物を盗んだり、捨てられた食べ残しを拾ったりして空腹を満たしているのが実情だ。
当局は各市・郡の保護施設に彼らを収容しようとしているが、施設自体も食糧や衣類が不足しており、子どもたちが逃げ出す例が後を絶たない。情報筋は「施設では規律ばかり強調され、食事も十分に与えられない。むしろ外で物乞いをした方が生き延びられると子どもたちは考えている」と証言した。
国家レベルの対応は形骸化している。
住民の間では「安定した経済活動を保障し、農民に土地を分配して自立的に農業を行えるようにすべきだ」との意見も出ている。しかし体制の硬直性から実現は困難だ。消息筋は「政府は統制と取り締まりばかりで、結局は住民の生存が脅かされ、子どもたちは再びコッチェビに追いやられている」と語った。
北朝鮮当局の統制強化にもかかわらず、経済悪化と食糧難は子どもたちの路上生活という形で社会の歪みを鮮明に浮かび上がらせている。