10月10日、北朝鮮・平壌で朝鮮労働党創建80周年を祝う大規模な軍事パレードが開催された。金正恩総書記は閲兵台で演説を行い、朝鮮人民軍の忠誠を強調した。

式典には、ロシアのメドベージェフ前大統領(安全保障会議副議長)や中国の李強首相、ベトナムのトー・ラム共産党書記長など、主要友好国の要人が顔をそろえ、北朝鮮の「対米・対南結束」を象徴する場となった。

注目を集めたのは、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星20型」の初登場である。北朝鮮は昨年10月、「火星19型」の発射実験を「最終完結版のICBM」と称していたが、今回の「火星20型」はそれを凌駕する最新鋭の戦略兵器とされる。今月4日に開幕した兵器展覧会「国防発展2025」で姿を現したが、パレードに登場するのは今回が初めてだ。

朝鮮中央通信は「最強の核戦略兵器システムである『火星砲-20』型縦隊が行進すると、観衆の歓呼は最高潮に達した」と報じた。火星20型は固体燃料ロケットを搭載し、従来より発射準備時間を短縮。機動性や隠蔽性が大幅に向上したとみられる。さらに、多弾頭化(MIRV)を想定した設計である可能性も指摘されており、米本土を射程に収める新たな脅威として注目されている。事実上、ICBMの標的は米国であり、今後の米朝関係の火種となることは避けられそうにない。

(動画:北朝鮮で労働党80周年記念軍事パレード開催 新型ICBM「火星20」登場!

金正恩氏は、火星20型の前を満足げな表情で見つめていたが、ひとつ気になる“空席”があった。これまで父親の傍らで何度も公式行事に姿を見せてきた長女ジュエ氏の姿が見えなかったのだ。ジュエ氏は過去、軍事パレードや兵器展覧会の閲兵台にも同席しており、今回の80周年行事にも登場するとみられていた。

しかし、9月初旬の訪中以降、彼女の動静は途絶えたままだ。不在の理由はもちろん不明だが、後継者説が浮上する中での最重要イベントの不在は、憶測を再燃させるだろう。

もっとも、北朝鮮で重要人物が一定期間姿を見せず、いきなり登場することは珍しくない。ましてや、ジュエ氏はまだ11~12歳の少女であり、家庭的な配慮や体調、あるいは本人の意向など、単純な理由の可能性もある。

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