金正恩総書記の訪中以降、北朝鮮各地で中国との合弁・合作事業が急速に活発化していると、複数のデイリーNK内部情報筋が明らかにした。平壌をはじめ平安道や咸鏡道などを中国企業や個人投資家が直接訪れ、現地パートナーと協力を進めているという。

北朝鮮当局は「地方発展20×10政策」と称する新たな経済再建構想の一環として、地方の自立的発展と農村振興を推進中だ。情報筋によれば、朝鮮労働党組織指導部と内閣は今月初め、各道党委員会および人民委員会に対し「中国との合弁・合作事業を全面的に再開せよ」との指示を正式に下達。以後、各地方では党委員会が事業総括を、人民委員会外事局が対中実務協議を担当する体制が構築されたという。

「地方発展20×10政策」は金正恩氏が掲げる経済政策の目玉だが、中国と疎遠となったことで、投資・資材が不足し思うように進んでいない。その難局を、首脳外交によって打開しようとしているのかもしれない。

平安北道の情報筋は「中央が地方に外資導入の権限を委譲した形で、地方幹部の間では歓迎ムードが広がっている」と語る。事業形態は大きく三つに分かれるという。第一は、金正恩氏の訪中後に新たに契約された「新規契約型」。第二は、コロナ禍で中断されていた既存事業を再開・拡張する「再稼働型」。第三は、中国の個人投資家が直接現地入りし、投資を進める「個人投資型」である。

いずれの形態も、中国側が資金・技術・設備を、北朝鮮側が土地・労働力・行政手続きを提供する仕組みだ。たとえば平安北道義州郡の徳鉉鉱山では、中国企業が供給した掘削機材を用いて操業を再開。

隣接する9月製鉄総合企業所には中国人技術者が派遣され、技術移転を進めているという。

平壌の兄弟山区域では、中国の大型建設機械メーカーが合弁でコンクリート・建材生産施設を建設中だ。現地では「住宅建設資材の国産化と自給体制の確立を狙った試み」との見方が広がっている。

また農業分野でも動きが目立ち、平安南道成川郡や咸鏡南道咸州郡などの低生産地域に中国の個人投資家が入域し、土地調査や土壌改良、資材倉庫建設などを進めている。これは「個人単位の外資導入モデル」として注目されている。

平壌の別の情報筋は「党はこの事業を通じて地方発展戦略を定着させたい考えだ」とし、「特に経済官僚の間では、今後10年間の国家経済運営を試す重要な段階と受け止められている」と述べた。

さらに平安北道の関係者によると、「すでに中国から技術者と機材が続々と到着しており、行政手続きの迅速化を指示する通達も出た」という。地域住民の間では、「仕事と食料が増える」との期待感が広がっている。

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