北朝鮮・平安南道(ピョンアンナムド)の銀波(ウンパ)鉱山で、女性労働者への過酷な差別や暴力的扱いを訴える内部告発が相次ぎ、党中央規律調査部が異例の内部調査に乗り出したことが分かった。劣悪な労働環境のもとで女性労働者が死亡した事件が発端となり、「地獄のような現場」での実態が明るみに出つつある。

デイリーNKの内部情報筋によると、今月6日、銀波鉱山で働く20代前半の女性労働者2人が党中央に陳情を提出した。2人は以前から鉱山幹部の不当な労働命令や暴力、性的差別などについて鉱山党委員会に訴えていたが、受理されることはなく、むしろ「これ以上騒ぐな」と圧力を受けていたという。

しかし最近、同僚の女性労働者が過酷な作業を強いられ死亡する事故が発生。これを機に、2人は上級機関への直接陳情に踏み切り、内容が党中央に届いたことで事態は一変した。

情報筋によれば、銀波鉱山では多くの女性労働者が高級中学校(日本の高校に相当)を卒業後すぐに集団で配属され、外部との接触がほとんどない生活を強いられている。男性幹部や労働者らは彼女たちを「逃げ場のないネズミ」と呼び、侮辱や虐待を日常的に繰り返してきたという。

党中央規律調査部は先月下旬、調査員を現地に派遣。調査の結果、女性労働者が男性と同じ坑内作業に従事しながらも賃金・待遇面で差別され、休憩時間さえ与えられていない実態が確認された。さらに、病気になっても治療を受けられず労働を強いられ、精神的苦痛から自殺を試みたケースまであったことも判明した。

一方で、鉱山幹部らは「問題が大きくなれば自分の地位が危うくなる」として、調査開始前に内部文書の改ざんや隠蔽を試みた形跡が見つかり、党中央は追加の調査員を派遣したという。

現地の女性労働者の間では、今回の調査を契機に改善が進むのではないかとの期待と、「結局うやむやに終わるのでは」との不安が交錯している。彼女たちは「なぜ女性だからといって従順さばかり求められるのか」と訴えながら、「今こそ私たちの声を記録に残そう」と連帯の動きを見せているという。

関係筋によると、党中央規律調査部は銀波鉱山だけでなく、周辺の炭鉱・工業地帯でも同様の実態調査を拡大する方針を示している。中央では「第8回党大会で隠蔽された事件を洗い出し、第9回党大会までに女性労働者の待遇改善策をまとめよ」との指令が下されたという。

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