ウクライナ国防省情報総局(HUR)は15日、ロシアに輸送される北朝鮮製兵器・弾薬の供給網を断つため、シベリア横断鉄道の一部区間を標的とした爆破作戦を実施したと発表した。HURによれば、作戦は13日にロシア極東・ハバロフスク地方で行われ、爆発により貨物列車が脱線し、線路が破損したという。

HURは、この区間が北朝鮮からロシアへ送られる武器・弾薬を前線へ運ぶ上で重要な軍事補給ルートとなっている点を強調し、「今回の作戦で軍需物資の移動が阻まれた」と主張した。

シベリア横断鉄道は、モスクワからウラジオストクまで約9000キロを結ぶロシアの大動脈であり、極東からウクライナ前線に至るまでの軍需輸送ルートとしても機能している。HURは今回の攻撃について「ロシアの物流能力を打撃するための一環だ」と説明。加えて、「ロシアの情報機関が重要インフラを有効に統制できていないことが改めて証明された」と指摘した。

北朝鮮はウクライナ戦争でロシアを軍事的に支援しており、ロケット弾、弾道ミサイル、火砲弾薬などを供給している。ウクライナ海外情報局(FISU)は今年7月、北朝鮮がこれまでに約650万発の砲弾をロシアに提供し、「実質的にロシア軍の主要な弾薬供給国となっている」との見方を示していた。

こうした中、金正恩総書記の動静も注目される。金氏は9月に中国で行われた抗日戦記念式典には参加したものの、5月のモスクワ対独戦勝記念式典には姿を見せなかった。現在はむしろ中国よりロシアと政治的に接近しているにもかかわらずだ。

北朝鮮はロシア向けに大量の兵器支援を続け、さらにはロシア西部・クルスク州に派兵したことで、事実上ウクライナとの「交戦国」と見なされる状況にある。

これは、金正恩氏の海外訪問時には暗殺リスクが過去と比べて高まっていることを意味する。ウクライナが、実際に金正恩氏に対する暗殺作戦を展開するかどうかはさておき、モスクワはすでにウクライナ軍のドローン攻撃を受けている現実がある。

こうした状況を踏まえると、トランプ米大統領との会談のためにシンガポールやベトナムを訪問したことのある金正恩氏だが、今後訪問する国は列車で移動でき、警備体制を北朝鮮側が細部まで掌握しやすい中国やロシア極東地域に限定される可能性がある。

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